「いいよ!」温井時雄は落ち着いた声で答えた。
橋本燃は温井時雄の状態を確認した。使われている薬は良質なものだったが、どれも非常に保守的な治療薬で、骨の早期回復を促進する効果はあまりなかった。
「怪我の回復状態は悪くないわ、ギプスはもう必要ないわね!」橋本燃はバッグから青と赤の2つの薬瓶を取り出した。「これは私が自分で開発した薬よ。青い瓶は傷口に塗って、赤い瓶は内服用。一回に3粒、1日3回、食後に服用してね。予想では1週間後に退院できるわ」
橋本燃が退院の時期まで予測したのを聞いて、松本晴子の目が輝いた。
彼女が意識を取り戻した時、両足はリハビリで座るだけで言葉にできないほど痛かった。橋本燃は彼女を治療し、2ヶ月で立てるようになると言った。
そして実際に彼女は2ヶ月で立ち上がることができた。
もし温井時雄が本当に1週間で健康を回復して退院できれば、新年まであと1週間あるので、彼女は温井時雄と結婚できるだろう。
「燃、本当に時雄は1週間で退院できるの?」
「義兄が私の言う通りに薬を使えば、絶対に大丈夫よ。義兄が早く退院できるように、姉さんはちゃんと薬を飲ませてあげてね!」
「わかったわ、燃、ありがとう」松本晴子は嬉しそうに礼を言った。
「どういたしまして、みんな家族なんだから、そんなに遠慮しないで。何かあったら電話してね、私は会社に報告に行くわ」
去っていく橋本燃の背中を見て、温井時雄の瞳は深く沈んでいた。
橋本燃、君の能力があれば、復讐したいなら、百人の田中雪満でも君の敵ではない。
沢田慕人が失脚した後、なぜまだ松本家に戻って芝居を打つのか?
しばらく考えた後、温井時雄は一つの結論に達した。
蛙を茹でるように、人を殺し心を滅ぼす。
橋本燃は田中雪満をあっさり死なせたくない、彼女はゆっくりと田中雪満を弄び殺したいのだ、そして彼女の母親を裏切った松本志遠も。
温井時雄の口元に冷たい笑みが浮かんだ。
橋本燃、あなたが何を破壊したいのか、私はあえてそれを守ってみせよう!
あなたが本当に万能かどうか、見てみたいものだ。
「時雄、まず薬を塗りましょうか?」松本晴子の水のように優しい声が温井時雄を深い思考から引き戻した。
松本晴子の手にある美しく精巧な青い瓶を見て、温井時雄は本能的に拒否したが、それでも瓶を受け取った。