「私は田中雪満の身に、異能力の神秘のベールを剥がす最終的な資料があるのではないかと疑っています。もしそれが本当なら、あなたの奥さんの体内の毒も解除できるかもしれません!」
雷田獅との戦いで、異能力に関する資料がすべて焼かれたことを知った後、橋本燃はずっと後悔し、自責の念に駆られていた。異能力の資料を守れなかったこと、星野輝への約束を果たせず、彼の妻の毒を解くことができないことを。
雷田さくらの薬が毒を盛られ、あと少しで救えなかったとき、燃はようやく狂ってしまった雪満のことを思い出した。
雪満の狂気について、燃は疑いを持っていなかった。
三人の子供を続けて失うことは、母親にとって世界で最も心を刺し貫く痛みだからだ。
彼女はずっと雪満が本当に狂ったのだと思っていた。
さくらが毒を盛られた後、彼女は無視していた雪満を改めて見直した。松本夕子は異能力の新世代の継承者として、重要なことはきっとバックアップを残しているはずだ。
夕子がどれほど雪満を憎んでいたとしても、雪満は彼女が最も信頼する人物だった。異能力に関する重要な資料は、きっと雪満に保管を頼んでいたはずだ。
そうでなければ、雷田琰の目の前で、さくらの薬に細工をすることなど誰にもできないはずだ。
星野輝は燃の言葉を聞いて、目に希望の光を輝かせた。「橋本社長がそう疑うなら、なぜもっと早く教えてくれなかったのですか?もっと厳重に雪満を監視させることができたのに。そうすれば雪満が逃げることもなかったでしょう。」
「異能力の起源はおそらく蝗害を治療するためだったのでしょうが、これほど長い年月の継承を経て、各世代の継承者が自分の経験と心血を注いできました。
もはや単なる蝗害治療という当初の目的を超えています。異能力を学ぶ者は邪悪で、三人の子供を失った母親が異能力を学べば、彼女から爆発するエネルギーは私たちの想像を超えるものです。
彼女を閉じ込めておくと、かえって異能力に関する情報は一切得られません。彼女を逃がし、自分の異能力が無敵だと思わせ、私たちを軽視する心理を生み出すことで、彼女は自ら姿を現すでしょう。そうして初めて私たちは欲しいものを手に入れる可能性があるのです。」
輝はうなずき、燃を見る目はさらに敬服の念に満ちていた。
最初、こんな若い女性の下で働くことに、輝は不満を感じていた。