第303章 男は隠し事と嘘が一番嫌い

「彼は人を一人用意して、私たちの代わりに罰を受けさせると言ったのに、なぜこんなものを書かなければならないの?それに、私たちはすでに供述書を書いたじゃない?彼の能力なら、私たちの供述書を見ることができるはずでしょう?」

「それについては私もよく分からないわ。ただ、残った姉妹たちは皆書いたということだけは知っているわ。書かなくても構わないけど、残される可能性は低くなるわね。自分を信じず、自分と心を一つにしない人を残したいと思う人はいないから」

「あなたも書いたの?」

森川麗子は向かいの棚にある書類袋を指さした。「みんなの書いた資料はあそこに入っているわ」

高橋若渓は立ち上がり、資料を手に取って読み始めた。

それぞれの犯罪状況は異なっていた。強盗に襲われ過剰防衛で相手を殺してしまった人もいれば、母親の仇を討つために相手の家族全員を毒殺した人もいた。

同僚との権力争いで怒りを抑えきれず、相手が気づかないうちに階段から突き落とした人もいた。

「あなたのお父さんがあなたを虐待して、あなたが殺したの?」若渓は驚いて麗子を見た。

彼女の印象では、両親や家族は娘にとって最も親しく愛する存在のはずだった。どうしてそんな獣のような行為ができるのだろう?

「すべての父親が父親と呼べるわけではないわ。私の父は小さい頃から毎日酒を飲んでは、酔っぱらうと母と私を殴っていたの。一ヶ月前、彼は酔っ払って、私を自分の妾にしようとした。母は彼に殴り殺され、私は怒りのあまり彼を殺してしまったの!」麗子は涙を流しながら、体を震わせて悲しげに言った。

「よくやった。そんな畜生以下の奴は、八つ裂きにして塩水に漬けるべきよ」若渓は言ってから少し驚いた。彼女はライバルに同情していたのだ。

「私は自分の人生がただ死を待つだけだと思っていたわ。まさか将軍に出会えるなんて。将軍は光のようで、人生がこんなにも素晴らしいものだと感じさせてくれた。たとえ彼が私を選ばなくても、この人生に悔いはないわ」

麗子がこう言うとき、彼女の顔は満足と幸せに満ちていた。まるで彼女がすでに世界で最も幸せな女性であるかのように。

「私の番よ。入るわね。あなたにはまだ考える時間があるわ。もし望まないなら、このドアを出て行けば、中村執事があなたを送り返してくれるわ」