第325章 田中黙が告白される

「当時、橋本燃があなたの体から汚物を吸い出して救命していたんです。お義姉さんはあなたがお爺さんのようになるのを恐れて、緊急事態だったからああいう行動に出たんでしょう」高橋思斉は説明した。

「なるほど!」高橋啓川は少し考えてから、冷たい目で言った。「一事が万事ではない。田中黙が私を救ってくれたことには感謝している。だが、彼が暖香の手を砕いたことには代償を払わせねばならない。田中家に高橋家が甘い柿ではないこと、彼らが思うがままに引きずり下ろせる相手ではないことを知らしめるべきだ」

高橋家の三兄弟は父の言葉を聞き、記者の質問を思い出して、一人一人の目が一層強固で毅然としたものになった。

「いい気になってるな、田中黙。他人の肩を踏み台にして上に立つのが癖になったようだが、今回は我が高橋家の骨がどれほど硬いか思い知らせてやる。踏み台にしようとするなら、粉々に砕け散るまで叩き落としてやる」高橋修哲は力強く言い放った。

……

藤原錦一の病室にて。

雷田さくらに支えられて入ってきた、手が粽のように包帯で巻かれた田中黙を見て、錦一は嫌そうに舌打ちした。

「二週間も彼女に会いに行かないから、少しは立ち直ったのかと思ったのに。見ろよ、この情けなさ。半月も経たないうちに、またあの女のせいで片手を潰すとは。本当に情けない奴だ」

錦一はそう言うと、怒ったように彼の後ろにいる山本煜司を睨みつけた。「このバカ野郎、あいつがあの女に会うと必ず傷だらけで帰ってくるって知ってるくせに、なぜ一緒に法廷に行かなかった?ボスを交代したいのか?」

「どうしても付いて来るなって言うんだから、どうしようもないじゃないか。証人になるだけでこんな血みどろの事態になるなんて、誰が想像できたよ」煜司は強がりを言いながらも、心の中では後悔していた。

もし彼がこっそり付いていっていれば、ボスが高橋家の三兄弟にあんなにひどく殴られることもなかっただろう。

実際、ボスの武術の腕前からすれば、あの三兄弟など相手にならないはずだ。ただ相手が橋本燃のいとこだったため、ずっと力を抑えていたから、あんなにひどく殴られることになったのだ。

「煜司を責めるな。少しの傷ならすぐに治る」田中黙は淡々と静かに言った。