「むかしむかし、おじいさんとおばあさんがいました…」優しく坊やに物語を読んでいると、坊やが目を閉じて眠りについたのを見て、後藤澄玲は手に持っていた本を置き、身を屈めて坊やの額にキスをした。
彼女が産んだ子供は本当に可愛い。寝ている姿さえもこんなに愛らしく、柔らかくてふわふわして見ているだけでキスしたくなる。
もう何度か坊やにキスをして、後藤澄玲はまだ時間が早いと思い、坊やの布団をかけ直してから机に座って事件の資料を整理し始めた。
高城市を離れていたここ数年、彼女は坊やの世話をする以外は仕事と勉強に打ち込んでいた。
今回帰ってきたのは両親が急かしていたからで、臨を連れて帰れば家族で面倒を見ることもできると言われ、後藤澄玲は老夫婦の説得に負け、ちょうど手元に仕事もあったので先に帰ってきたのだ。