第186章 彼女はもういない

陸橋北都が尋ね終わると、副院長の顔色が一瞬で変わった。

この子は彼を信頼して澄玲を連れてきたのに、彼は彼を欺いてしまった。

困惑した表情で陸橋北都を見つめながら、副院長は言った。「北都よ!私と君のお父さんは同級生で仲が良いが、私は澄玲に恩義がある。澄玲が君より先に私を訪ねてきて、断ることができなかったんだ。それにこういうことは長く隠せるものではないから、承諾したんだよ。」

ここまで言って、副院長は真剣な表情で続けた。「澄玲は確かに妊娠しているよ。」

本来は後藤澄玲の頼みを受け入れたくなかったが、最終的には長い間悩んだ末、彼女と陸橋北都の仲が良くないという噂も聞いていたので、彼女がお腹の子を守りたいのだろうと思い、承諾したのだった。

それに、どんな母親も自分の子供を愛さないはずがない。しかも、この子は彼女が長い間努力して授かった子供だった。