第224章 彼は彼女を気にかけている

一瞬のうちに、言い表せない雰囲気が漂った。

陸橋北都が身を寄せてくるのを見て、後藤澄玲は手を上げて彼を押しのけ、何事もなかったかのように言った。「先に帰るわ、送ってくれてありがとう」

そう言うと、陸橋北都の返事を待たずに、後藤澄玲は車のドアを開けて降りた。

去っていく後藤澄玲の背中を見送りながら、陸橋北都の目には深い思いが溢れていた。

三年ぶりの再会で、こうして離婚することになるとは、どうしても思いもよらなかった。

後藤澄玲の姿が見えなくなってからもずっと、陸橋北都はようやく車を発進させ、後藤家を後にした。

御崎湾に戻ると、陸橋北都は書斎で残業をしていたが、気づかぬうちに三年前の監視カメラの映像を再び開いていた。

三年間、この映像を何度見ても、毎回辛い気持ちになった。