株?
この二文字を聞いて、江口漠遠は苛立ちを抑えた。「会社の株がどうした?」
秘書は汗を拭いた。「なぜか分かりませんが、会社の株価が下がり続けています。今はもう5ポイント下落しました!」
株価が5ポイント下落するということは、5%の下落を意味する。
もし誰かが5千万分の江口グループの株を持っていれば、250万の損失を被ることになる。
江口漠遠の表情が一瞬で変わった。「すぐに財務アドバイザーを呼べ」
秘書は急いで出て行った。
5分後、彼は財務アドバイザーを連れて戻ってきた。
財務アドバイザーはパソコンを抱え、江口漠遠に向かって一礼した。「江口社長」
「なぜ株価がこんなに急落しているんだ?」漠遠は全身から冷たい気配を発していた。「今朝はまだ正常だったはずだ」
「申し訳ありません、社長。私も株価の異常に今気づいたばかりです」財務アドバイザーは額に大粒の汗を浮かべていた。「相手の動きが早すぎて、いつ大量に会社の株を買い集めたのか分かりません。同じタイミングで一斉に売り出したようです」
「そのせいで株価が下がり続け、会社は大きな損失を被っています」
漠遠の表情は氷のように冷たかった。「理由は聞いていない。どれくらいで解決できるかだけ聞きたい」
「それは...」財務アドバイザーは困った様子だった。「相手は完全に高値で株主から株を買い集め、極めて低い価格で投げ売りしています。相手が買収をやめない限り...」
江口グループの株主は簡単に株を売ったりしないが、一般の株主は違う。彼らは江口グループの存続など気にせず、儲かりさえすればいいのだ。
秘書は驚いた。「そんなことをすれば、彼ら自身も大きな損失を被るはずですが」
完全に自分にも相手にも利益をもたらさない行為だ。何のためだろう?
漠遠の唇は引き締まり、さらに空気が重くなった。「誰の仕業だ?」
「まったく分かりません」財務アドバイザーは汗を拭きながら言った。「株を売却している人物がO大陸にいることだけは分かりますが、それ以上は何も...」
わずか数時間で江口グループの株価をこれほど急落させることができるのは、帝都の第一の名門でさえ不可能だ。
そしてO大陸で、帝都の第一の名門を完全に圧倒できる財閥は数えるほどしかない。
しかし、なぜO大陸の財閥が突然江口グループに手を出すのだろうか?