一枚のドアを隔てていたが、すべてが見えていた。
ドアの外にいる人の身分も含めて。
院長は一瞬固まり、思わず少女の方を見た。「勝山さん、もしかして……」
勝山子衿は自分の身分を特に隠していたわけではなかったが、対外的には瀬戸仁病院は秘密にしていた。
結局のところ、彼女は彼らの従業員ではなく、オーナーだったのだから。
院長室まで来られるということは、来訪者もただの人物ではないことを示していた。
「大丈夫です」子衿は視線を戻し、指で軽くテーブルをトントンと叩いた。「入ってもらって」
許可を得た院長は急いで立ち上がり、ドアを開けた。
意外なことに、ドアの外には全身を厳重に包んだ男性が立っていた。
四月だというのに、マスクと帽子をかぶり、顔を一切見せていない。
ただ一つ、珍しい深い青色の瞳だけが、海のように深遠で広大だった。
しかし彼の姿は高く凛としており、どれほど隠していても、その卓越した気品を隠しきれなかった。
山のように堂々として、雅な人物の極み。
院長はまた驚いて「どちら様でしょうか?」
男性はマスクを外し、顔を見せた。
立体的な顔立ち、深い目元。
誰もが見覚えのある美しい顔、街中でもよく見かけるほどの。
「あ、あなたはあの有名な影帝!」院長は男性をしばらく見つめた後、突然興奮して言った。「庄司曜之さんですよね?」
庄司曜之は少し驚いた様子だったが、すぐに微笑んで頷いた。「私のことをご存知だったとは」
彼は95年以降生まれで、活発なファンもほとんど学生たちだった。年配の世代は彼を知らないことが多かった。
「知ってますとも、もちろん知ってます」院長は嬉しそうに太ももを叩いた。「うちの娘があなたの大ファンでね、毎日家で騒いでるんですよ。私まで巻き込んであなたの応援に参加させられてます」
曜之は笑顔を見せ、一般的な芸能人のような態度はなく、とても穏やかだった。「ご厚意に感謝します」
「庄司影帝、できれば…できれば…」院長は慌てて紙とペンを探し、彼に渡した。「娘にサインをいただけませんか?」
ちょうど数日後に娘の誕生日が来るところだった。
庄司曜之のサインが手に入れば、今回のプレゼントは間違いなく妻のものより上回るだろう。
娘もきっと彼のことをもっと好きになるはずだ。