108 彼女は彼の腰を抱きしめた【2更】

一枚のドアを隔てていたが、すべてが見えていた。

ドアの外にいる人の身分も含めて。

院長は一瞬固まり、思わず少女の方を見た。「勝山さん、もしかして……」

勝山子衿は自分の身分を特に隠していたわけではなかったが、対外的には瀬戸仁病院は秘密にしていた。

結局のところ、彼女は彼らの従業員ではなく、オーナーだったのだから。

院長室まで来られるということは、来訪者もただの人物ではないことを示していた。

「大丈夫です」子衿は視線を戻し、指で軽くテーブルをトントンと叩いた。「入ってもらって」

許可を得た院長は急いで立ち上がり、ドアを開けた。

意外なことに、ドアの外には全身を厳重に包んだ男性が立っていた。

四月だというのに、マスクと帽子をかぶり、顔を一切見せていない。

ただ一つ、珍しい深い青色の瞳だけが、海のように深遠で広大だった。

しかし彼の姿は高く凛としており、どれほど隠していても、その卓越した気品を隠しきれなかった。

山のように堂々として、雅な人物の極み。

院長はまた驚いて「どちら様でしょうか?」

男性はマスクを外し、顔を見せた。

立体的な顔立ち、深い目元。

誰もが見覚えのある美しい顔、街中でもよく見かけるほどの。

「あ、あなたはあの有名な影帝!」院長は男性をしばらく見つめた後、突然興奮して言った。「庄司曜之さんですよね?」

庄司曜之は少し驚いた様子だったが、すぐに微笑んで頷いた。「私のことをご存知だったとは」

彼は95年以降生まれで、活発なファンもほとんど学生たちだった。年配の世代は彼を知らないことが多かった。

「知ってますとも、もちろん知ってます」院長は嬉しそうに太ももを叩いた。「うちの娘があなたの大ファンでね、毎日家で騒いでるんですよ。私まで巻き込んであなたの応援に参加させられてます」

曜之は笑顔を見せ、一般的な芸能人のような態度はなく、とても穏やかだった。「ご厚意に感謝します」

「庄司影帝、できれば…できれば…」院長は慌てて紙とペンを探し、彼に渡した。「娘にサインをいただけませんか?」

ちょうど数日後に娘の誕生日が来るところだった。

庄司曜之のサインが手に入れば、今回のプレゼントは間違いなく妻のものより上回るだろう。

娘もきっと彼のことをもっと好きになるはずだ。