236 継承人、ローラン銀行のブラックゴールドカード【3更】_2

夢野家が金に困っていないというわけではない。

占術名家である五条家でさえ、金のために商売を始めたのだ。

ただ、夢野家の家長は先祖の遺志を忠実に守り、俗世に一歩も踏み入れないと決めており、古医学界の中でのみ活動し、ごく一部の家族だけが外に出ていた。

一つ一つの薬材が、天価である。

夢野景は、その中の一人の天才古武者の子孫だった。

本来なら彼は古武名家の方に属するはずだったが、父親が婿入りしたため、夢野家の姓を継いでいた。

古武者は、常に横暴だ。

力で解決できることに、決して金は使わない。

彼は外出する時、銀行カードすら持ち歩かず、現金などなおさらだった。

景は東京のこちらで、家柄も背景もない小娘が、あの雪霊芝に目をつけていたとは思いもしなかった。

それにあの男も……

彼は軽く咳をし、深い眼差しを向けた。

「先生、しかし松本家のあの若旦那は——」女性は眉をひそめ、嫌悪感を込めた口調で言った。「本当に役立たずですね。雪霊芝を落札するお金すらあなたに出し惜しみするなんて。あなたが誰なのか知ったら、きっと後悔することになりますよ」

「それは彼を誤解しているよ」景は扇子を閉じ、微笑んだ。「彼はね、この世代の松本家の嫡流の一員に過ぎないんだ。松本家の真の後継者ではない。真の後継者だけが、古医学界に入る資格を持つんだよ」

「彼が私に数百万を使いたくないのは、無理もない」

景は目を細め、少し間を置いて淡々と言った。「できれば手を出したくない。小娘は花や草が好きなようだから、帝都からいくつか鉢植えを送らせて、交換してもらいなさい」

女性は命令を受け、帝都の人々に連絡を取り始めた。

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オークションが終わると、ほとんどの人が散っていった。

伊藤明城と伊藤夫人は当然、伊藤雲深を見かけたが、彼らは無視して直接帰った。

伊藤羽含は雲深を探そうとしたが、見つからなかったので諦めるしかなかった。

「真奈子、行くよ、帰ろう」羽含はコートを羽織り、振り返ると、万代真奈子が周りを必死に探し回っているのを見て驚いた。「真奈子?」

「私のカード!」真奈子は椅子の下も確認したが見つからず、焦って目が赤くなっていた。「羽含、私の銀行カードがなくなったの」