「うん」伊藤雲深は淡々と言った。「賞味期限は長いから、安心して。期限切れじゃない」
勝山子衿は丸い容器を自分のポケットに入れ、何も言わなかった。
この種の軟膏は、彼女も似たようなものを作ったことがあるが、とても手間がかかる。
一般的に言えば、肝臓を貫通されたり、肩甲骨が折れたりするような致命傷を何度も負わない限り、こういった軟膏は使わないものだ。
そう考えると、子衿は顔を上げ、物思いに耽るように男性の襟元を見つめた。
彼女は彼の腕を観察したことがあるが、そこに傷跡はなかった。
もっとも、腕の位置には通常、致命傷はできないだろう。
彼女の視線はとても直接的で、雲深の感覚は常に鋭敏だから、気づかないはずがない。
彼は桃花眼を細め、笑った。「坊や、どうしてまた僕を見つめてるの?」
「ああ」子衿は視線を外した。「あなたが綺麗だから」
「……」
いいね、彼の言葉に応じる術を学んだようだ。
「銃の許可証を取得しておいた」雲深は彼女をからかうだけで、本題の方が重要だった。「次にこういうことがあったら、直接銃を使っていい」
「人を殺すのは違法だよ」子衿は髪を整えながら、かなり真面目な口調で言った。「私は法律を守る」
もちろん、東京に潜入してきた神銃ランキング第七位の人物は、和国の法律の保護範囲内にはない。
「殺さなくていい、気絶させるだけで」
「……」
「それから私が来るのを待って、その場で裁く」
「長官」子衿はゆっくりとその呼び名を口にした。「あなたの部下があなたがこんなに本業をないがしろにしていることを知ったら、きっと団結してあなたを殴りに来るよ」
「ん?」雲深は非常に落ち着いていて、片手をポケットに入れ、不真面目そうに笑った。「もうこんなに長いのに、彼らはまだ慣れていないのかな?」
子衿の表情が一瞬止まった。
彼女は突然、IBIの局長と一群の探長や探員がとても可哀想に思えた。
最高執行長官は仕事を管理しないだけでなく、手配リストにも載っているのだから。
「行こう」彼は手を上げて彼女の頭を軽くたたいた。「今日は遅いから、訓練キャンプには戻らない。ホテルを見つけて泊まろう」
クイーンホテルは全国チェーンで、帝都にもある。
子衿はうなずいた。「夢子に無事を知らせておくね」
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子衿と雲深が去った後、松本承が戻ってきた。