360 ビンタの波、仮面が落ちる【2更】_2

田中梨花は頭の中がブンブンと鳴るほど怒っていた。

「それに、契約違反をしたのはあなたたちだ」内山PDは気分爽快そうに言った。「今すぐ全ての荷物を持って番組から出て行け。違約金も払え」

そう言った後、まだ足りないと思ったのか、さらに一撃を加えた。「雲井和月がデビューできるかどうかは本人次第だが、田中梨花、言っておくぞ。お前の手下のあの練習生は、もうデビューなんて夢見るな」

内山PDはもう梨花と葉山希子と話す気もなく、スタッフに二人を追い出すよう指示した。

冬の午後7時、空はとっくに暗くなっていた。

番組が借り切ったトレーニングキャンプ用の広大な敷地は郊外にあり、周囲には車もほとんど通っていなかった。

寒風が骨身に染みて、心まで冷え切っていた。

梨花は本当に少し後悔していた。

もし彼女が先に番組側をあんなに長く待たせていなければ、こんなに多くの予想外の出来事は起きなかっただろう。

しかし彼女は今でも理解できなかった。番組側がどうやって加藤真雨と秦野瑜子を招くことができたのか。

真雨については初光メディアが『青春202』に投資したからかもしれないが、瑜子はどうなのだろう?

「梨さん」希子は目を赤くして言った。「私はどうすればいいですか?」

「心配するな」梨花は歯を食いしばった。「この件は、せいぜいあなたがしばらくの間批判されるだけよ。会社に戻って、PR部門に連絡を取って、どうやってファンを操作するか考えましょう」

ファン操作は芸能界でよく使われる手段で、梨花も何度か使ったことがあった。

彼女は希子を被害者として描き、ファンに希子がとても不幸で可哀想だと思わせるつもりだった。そうすれば、ファンたちは希子を心配するようになり、より忠実になるだろう。

これは心理的な手段だが、秦野瑜子や庄司曜之のような本当に実力のあるアーティストは、こんなことをする必要はないと考えていた。

希子は唇を噛んで、うなずいた。

彼女は数歩歩いた後、立ち止まり、少し躊躇するような目つきをした。

さっき会議室で雲井和月のアシスタントを見たような気がしたのだが。

梨花は彼女が動かないのを見て、怒った。「何を待っているの?」

「梨さん」希子は自分の疑問を口にした。