第32章 心肝

佐藤若菜はこの言葉を聞いて、思わず軽く笑った。「私がなぜアンジェを辞めたか知ってる？」斎藤遥が首を振るのを見て、彼女は続けた。「私は枕営業をしたくなかったのよ！」

「誰だ？神宮寺天誠か、それとも山田隼真か？」遥の顔色が沈み、目に怒りの色が浮かんだ。

若菜は彼を軽く一瞥し、淡々と言った。「誰であれ関係ないわ。今はこうして元気でしょ！ふん、それに私が辞めて損したのは私じゃなくて、彼らよ！」自分の能力と専門性について、若菜はかなりの自信を持っていた！

遥は晴れやかな表情の若菜を一瞥すると、それ以上追及するのをやめた。ただ——アンジェ？彼はもちろん対処するつもりだった！

「詳細な計画と実行プロセスはできた？もし会長がこの案を承認するなら、あなたの資料は添付書類として提示すべきよね！」二時間後、若菜はPPTを完成させ、パソコンを遥の前に向けた。

遥は頷き、彼女のPPTの内容を注意深く確認し、いくつかの部署名を修正した後、USBメモリにコピーし、同時に自分が作成した計画も一緒にコピーした。

「父と時間の約束を取ってくる。父との話し合いには君も参加して、君が当面斎藤氏に来ない件について説得してほしい」遥は若菜に言った。

「いいわ、あなたがメインで話して、私は傍聴するだけで」若菜は頷いた。

「若菜、こうなると集団の戦略方向全体が変わることになるのを分かっているのか？」斎藤蓮はプレゼンを見終わった後、若菜に言った。

「会長、人のエネルギーには限りがあります。すべての分野で最高の成果を上げることは不可能です。なぜアップルはハードウェアだけを、マイクロソフトはソフトウェアだけを作るのでしょう？彼らに力や資金がないからですか？自分の得意分野を極め、独自のコア競争力を持つことで、企業が強くならないはずがありません！」若菜は知っていた。この道理は誰もが知っているが、周辺事業を捨てる決断をするには、知恵だけでなく勇気も必要だということを！

「コア競争力？斎藤氏のコア競争力は何だ？」この質問は遥に向けられていた。

「流通チャネルと製品です」遥は迷わず答えた。

「うむ、では生産は本当に徐々に弱体化させてもいいのか？」これは独り言だった。

だから遥と若菜は黙っていた。