第87章 取引(6)

言い終わると、彼女を抱いていた手を離し、田中佳子に向かって怠そうに言った。「お義姉さん、今回はあなたが私を探しに来たのか、それとも兄を探しに来たのか?」

田中佳子は靴も脱がずに、そのままハイヒールで個室に入ろうとしたが、横にいた店員に止められた。「奥様、靴を脱いでください!」

佳子は振り返って店員を睨みつけたが、人に悪妻の印象を与えたくなかったので、不本意ながらも靴を脱いでから中に入った。

「あなたたち、本当に恥知らずね。公共の場でもそんなにイチャイチャして!」まだ座りもしないうちに、佳子は容赦なく非難し、若菜を見る目は彼女を引き裂きたいほど憎々しげだった。

「私たちがここでヤったとしても、あなたには関係ないわ!」若菜は淡々と言い、自分の食事を続け、佳子を見ようともしなかった。

「ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ」ちょうどお茶を口に運んでいた時、若菜のあまりにも過激な言葉に、むせてしまった——この女性は、外敵に対して団結する時、本当に並外れて強いのだ!

「あなた?本当に恥知らずね!斎藤遥がどうしてあなたのような狐のように媚びた女に魅了されたのか分からないわ!佐藤詩織が自殺したことさえ気にしないなんて!」若菜が冷静であればあるほど、佳子はますます怒りを募らせた。

今や彼女は遥を探しに来た本来の目的さえ忘れ、いつも嫌っていた佐藤詩織のことまで持ち出して話題にしていた!

「田中佳子、用件があるなら言ってくれ。余計なことを言うな!」遥は顔を曇らせ、若菜を一瞥したが、彼女の表情に変化がないのを見て、やや表情を和らげた。

「用がないなら、私と若菜はまだ用事があるから、お相手はできないよ!」遥は手を叩いて店員を呼び、会計をして出ようとした。

佳子はようやく今日来た目的を切り出した。「遥、あなたのお兄さんは昨日一晩中帰ってこなかったわ。今また工場をグループから切り離そうとしているの?彼は何か問題を抱えているの?」

遥は彼女をちらりと見て、淡々と言った。「兄のことは兄に聞くべきだよ」