第109章 願いを借りる(3)

「もちろんです！よかったら今度オフィスでその件について話し合いましょう！今は夕食に何を食べたいか考えましょう！」斎藤遥は真剣な表情で言った。

「てっきり、今日は早いから家に帰って私に料理を作ってくれるって言うかと思った！」佐藤若菜は顔を上げて彼を見つめ、自分の心の中の設定を思い出して思わず笑ってしまった。

遥は悔しそうに彼女の頬をつまみ、歯を食いしばって言った。「意地悪な女だな、俺がお前を奴隷扱いするとでも思ってるのか！」

「ないわよ、私が思い込みすぎてただけ！覚えてる？結婚式の前、あなたは私を丸一週間奴隷扱いして、毎日家で料理を作らせたじゃない！」若菜も思わず軽く笑い出した。

「愛する奥さん！あれは結婚ムードを高めるためだったんだよ！」遥は自分がつまんだ場所が少し赤くなっているのを見て、手を離し、大きな手のひらで強くさすった。

笑いながら冗談を言い合いながら、専用エレベーターを降りると、ロビーで退勤の指紋認証をしている同僚たちに会い、二人は顔から冗談めいた表情を引っ込め、皆に親切に挨拶をした。

「特に行きたい場所がないなら、今夜は俺に任せてくれないか？」車に乗ると、遥は真面目な顔で若菜に言った。その口調は既に決めたという感じで、意見を求める様子は全くなかった！

「あなたに任せるの？私を売り飛ばしたりしないよね？」若菜の鋭い舌は常に理不尽でも三分の理を主張し、理があれば容赦しない！

「お前を買うのは俺くらいだろ！」遥は愛情たっぷりに若菜の髪を撫で、彼女の唇に軽いキスを盗み、それから車を発進させた。

彼の時々の小さな奇襲攻撃に慣れている若菜は、何でもないように顔を窓の外に向け、口元に浮かぶ微笑みが彼女の良い気分を物語っていた。

遥はそれを見なかったふりをして、悠々と車を駐車場から出した。

「ここ？」車を止めると、若菜は気づいた。ここは結婚式の日、二人が式場を離れた後に彼が連れてきた場所だった。

ただ、今日はまだ日が高く、血のように赤い夕日に包まれた広野は、夜の静かな風とは違う、心を揺さぶるような美しさがあった。そこに立つ人は、自然の神秘的な技に感動して長い間立ち尽くすほどだった。