第121章 最も原始的な幸福(2)

「二郎は君への求婚の仕方を考えているんだよ。晴音、酒会の日、私からの求婚をどうしてほしい?」斉藤空也は賢く話題を白石晴音に向けた。

彼の計画は、今はまだ父親に気づかれるわけにはいかない。だからとりあえずこの酒会と晴音を利用して父の注意を逸らし、自分は先に計画を始動させるべきだった。

空也が話している間、彼は視線を晴音に向けたが、その目には冷たさしかなく、温かさや愛情のかけらもなかった。

晴音は社会で揉まれた経験はないが、政府の官舎で育った子供として、政府機関で政治を操る人々がどれほど抜け目ないかを知っていた。

人の表情を読む能力は持ち合わせていた。彼女は空也の心に何かがあることを知っていた。それが何かはわからなかったが、彼の芝居に合わせて、愛らしく笑いながら言った。「あなたの言うとおりにするわ、私はあなたに従うわ!」

夫婦の息の合った演技のように見えたが、斎藤遥と晴音以外には、空也の目の異常さに気づいた者はいなかった。

表面上、この大家族は依然として賑やかだった。

斎藤蓮はこの大家族が表面上は和気あいあいとしている様子を見て、また葉山淑恵が長い間姿を隠していることもあり、感慨深げに皆に向かって言った。「琴乃はこの数日、お前の三番目の義姉さんと一緒に酒会の準備をしている。彼女に人事の知識を教えてもらうといい。酒会の後、お前も企業に入って鍛えられるといい。今日はみんな解散だ!」

そう言うと、皆が挨拶する間もなく、一人で階段を上がっていった。

後で執事から聞いた話では、驚くべきことに、この十数年間で、主人と奥様は翌朝遅くまで寝ていたという。また驚くべきことに、奥様はそれ以来、髪を高く結うことはなく、今流行りの韓国風のお団子ヘアにしており、以前よりも柔和に見えるようになったという。

また琴乃も言っていたが、その日、母の口元はずっと笑みを浮かべていて、まるで初恋の少女のようだったという。そして父の視線も前例のないほど優しく、ずっと母を追いかけていたという。

「若菜、川辺を散歩しよう」川辺のアパートに戻ると、遥の気分が急に沈んできた。

「いいわよ」若菜は彼の腕に手を入れ、静かに答えた。

9時過ぎの川辺は、夜ほど人は多くなかったが、バーが立ち並び、ネオンが輝くこの場所は、依然として賑わいを失わなかった。