「よし!三男坊はまだオフィスにいますか?」佐藤若菜は何気なく尋ねた。
「三男坊は29階で会議中です。あなたが来たら直接彼のオフィスに行くようにとお伝えするように言われています」山田静はテキパキと答えた。
「じゃあ上に行きますね、お忙しいところすみません!」若菜は頷いて、斎藤遥専用のエレベーターへ向かった。
遥のオフィスは、以前斎藤蓮が使っていたオフィスだった。斉藤空也が執務していた一ヶ月の間に、大幅な変更が行われ、蓮が使っていた紅木の家具はすべて宇宙風の金属製家具に取り替えられていた。
遥が引っ越してきた後、すべてをカエデ色の木製家具に変え、さらに中にサンプル衣料の展示エリアを追加した。新しいサンプルはまず必ず彼のところに送られてくる——これはデザイナー出身の社長が商品をいかに重視しているかを十分に示していた!
若菜がオフィスのドアを開けると、通りに面したガラスカーテンウォールの側に、以前あった臨時会談エリアが撤去されていた。その代わりに、半円形のシルク絨毯の上に、ヒョウ柄のビーズクッションが二つ置かれていた。この豪華で格調高い広大なオフィスの中でも、それらは不釣り合いには見えず、むしろサンプル衣料展示エリアと呼応するようなアーティスト気質を醸し出していた。
今、その分厚くて柔らかい絨毯の上には、ソファと同じ色合いのモコモコしたスリッパが一足置かれ、隣のカエデ色の低いテーブルには、ムースケーキの箱と熱いお茶が用意されていた。
若菜は心が温かくなり、そっと歩み寄ってスリッパに履き替え、ビーズクッションに身を沈め、まだ湯気の立つお茶を優しく手に取った。鼻先に持っていき、深く香りを吸い込むと、この上なく心地よく、安心感に包まれた!
9時頃、遥が会議を終えてオフィスに戻ってきたとき、若菜はすでにビーズクッションに横になって眠っていた。テーブルの上のお茶は半分飲まれ、ケーキは一つ食べられていた。眠っている彼女の口元には、少しだけケーキのかけらが付いていて、キャリアウーマンの威厳は微塵もなく、とても柔らかな印象だった!
遥は眠る若菜を見つめ、温かく微笑んだ。
「斎藤部長?」新任の秘書は状況がわからず、疑問符を浮かべた表情で遥を見た。