第226章 人生どこでも出会いがある(4)

あいつは、ただのお坊ちゃまだ。これまでの人生で、彼の意に逆らう人なんてほとんどいなかった!今では若菜のことを心の底から可愛がっていて、結婚してからというもの、彼女に譲歩することも少なくなかった!

でも大事なことになると、あの頑固なお坊ちゃま気質がまた顔を出して、まるで子供のような言い方をする。

この若菜は、いつも冷静で分別があったのに、今は遥に甘やかされて、少しずつわがままな性格になってきているようだ。あんなに冷静で大人だった人が、まさかあんな子供じみたことを言い出すなんて!

二人がこうして意地を張り合えば、事態はこうなるのも当然だ!

まさに「近朱者赤、近墨者黒」というわけだ!

「ねえ、私が遥を呼んでくる?女は引くべき時には引くものよ。あなた、仕事ではその術をうまく使っているじゃない。どうして私生活になると、鋼鉄の女戦士になっちゃうの?」橘美織は若菜を見ながら、少し歯がゆそうな表情を浮かべた。

「私が自分で行くわ!」若菜は美織を睨みつけ、立ち上がろうとしたが、入口に現れた人物に気を取られた。

「飛雨、私が頼みに行く必要もなさそうね。ほら、誰が来たか見てよ」若菜はゆっくりと座り直し、美織に言った。

美織が顔を上げて振り返ると——佐藤詩織だった!

まさに人生、どこで誰に会うか分からないものだ!詩織はチェック柄のコートを着て、足早に中へ入ってきた。

「止まって、振り返って、驚いた声を上げる!」美織は小声で言った。

詩織は入口を入ってすぐ、一人で座っている遥を見つけ、足を止めた。そして遥の方へ向き直り、歩み寄った。「遥!」

驚きと喜びが混じった声に、遥はパソコンから顔を上げた。詩織の血の気のない青白い顔が、彼の目の前に大きく映った。

「遥!」詩織は急いで近づき、彼の胸に飛び込もうとしたが、遥は身をかわして避けた。「ここは君と同席するのに適切な場所ではない」

「遥、私...最近元気?私、あなたに会いたかった。でも、あなたの生活を邪魔したくなくて、だから必死に考えないようにして、探さないようにしてた!でも、分かる?思い出すことが一番辛いの!」話しながら、彼女の目は赤くなり、まるで恋の苦しみに耐えてきたかのような様子だった。