第305章 あなたに愛してると言ったことがあるか(5)

想想は、湯気の立つコーヒーカップを手に取り、オフィスのドアを出る前にもう一度振り返って斎藤遥に言った。「斎藤部長、私に何か誤解があるんじゃないですか?」

遥は軽く顔を上げ、淡々と言った。「コーヒーはそこに置いて、座りなさい」

瑛子は遥の冷静な表情を見て、思わず胸が締め付けられた。少し躊躇した後、やはりコーヒーを持ったまま彼の向かいに座った。

「佐藤若菜からのシンガポールのファックスは何時に受け取ったんだ?」遥は指で軽くテーブルを叩きながら、彼女を見つめ、返答を待った。

「受け取った瞬間にすぐあなたに電話しました!」瑛子は落ち着いて答えた。

「ふむ、総務部で印刷した到着時間は前日の午前9時だったがな!」遥は印刷された受信リストを彼女の前に置いた。

「知っています、ファックスには時間が記録されていますから!送られてきたのは確かですが、私がすぐに受け取れなかったんです!」瑛子はびっしりと文字の書かれた紙を手に取った。その中の蛍光ペンで強調された時間が、特に目に痛かった。

「ふむ、アメリカでの数回の現地交渉や電話会議も、君がバイオ会社の社長を飛び越えて直接手配したんだな!」遥はファックスの件にこだわらず、話題を変えた。

「バイオ会社の件はずっとあなたが最も重視していることで、何度かの交渉にも私は参加してきました。あなたも私に、これは重点的にフォローすべきプロジェクトだと言いましたよね。だから新しい進展があれば、すぐに連絡を手配しました!何か問題でもあるんですか?」瑛子は彼がこの件を持ち出したのを聞いて、心臓が高鳴ったが、冷静を装って答えるしかなかった。

「斎藤インターナショナルの最も重要な管理職として、『フォロー』という言葉の意味を説明してくれないか?」遥は淡々と言った。

「私が?」「フォロー」とは何かという一言で、彼女は完全に弁解の余地を失った。

「あなたは私が越権行為をしたと責めているんですか?」瑛子は気落ちしながらも、不満げに言った。