「おい、誰のことを言ってるの?もしかして斎藤延彦が上にいて、彼が24時間あなたを追いかけるのを恐れて、ここに隠れてきたの?ちょっと見てみよう、追いかけてきたかどうか!」佐藤若菜は笑いながら言い、周りを見回すふりをした。
「はいはい、あなたには敵わないわ!遥は会議中だから、上で彼らの邪魔をしたくなかっただけよ。琴乃も一緒に呼ばない?」橘美織は彼女に降参した。冗談を言っても負けを認めない彼女には。
「うん、彼女も一緒に行きましょう!普段は空也がいるから、彼女も行きづらいでしょうし」若菜はうなずき、受付に琴乃への電話をかけてもらった。
少し考えてから、遥にメールを送った:「私は美織と琴乃と一緒に晴音を見舞いに行くわ、上には行かないから」
約10秒後、遥からの返信が来た:「わかった!」
若菜は微笑んで、携帯をしまった。
15分後、琴乃は管理職専用のエレベーターで降りてきた。体にぴったりとしたスーツ姿で、落ち着いて自信に満ちていた。年齢より少し大人びて見えたが、より威厳があり、この地位にふさわしく見えた。
「美織、若菜、行きましょう!」琴乃は彼女たちを見ると、足早に駆け寄ってきた。普段会社で装っている落ち着きは全く見られなかった。
「こういう琴乃の方が可愛いわね!」若菜は笑いながら言った。
「そうよ、今回斎藤氏に戻ってきて、私、ずいぶん老けちゃったわ」琴乃は口をとがらせ、ため息をついた。
その悩ましげな表情に、若菜と美織は大笑いしたが、同時に彼女のことを心配した。まだ若いのに、家族の事業のために頑張らなければならず、他のお嬢様のように青春や時間を自由に使えないのだから。
これまで夫婦で仕事をすることを避けてきた若菜は、思わず揺らいだ:この家族のために、自分も何かすべきではないだろうか?
この考えは頭の中でひらめいたが、DF社の数年間の育成と今後の契約を思い出し、その考えを押し殺した。
話している間に、遥も降りてきた:「若菜、これは私のお祝い金だから、持っていってあげて」そう言って、カードの入った封筒を若菜に渡した。
「斎藤社長、贈り物をしたいなら、電話一本で若菜に準備してもらえばいいのに、わざわざ自分で持ってくる必要ある?これは恋煩いってやつじゃない?」橘美織は遥を見て笑いながら言った。