昨晩、黒田邸で夕食を食べたため、席上では必ず酒を飲むことになり、スタッフは田原おじいさんの外出を1時間遅らせた。田原おばあさんは家にいなかったが、田原おじいさんには自分でやらなければならないことがたくさんあった。例えば、花の世話をしたり、おばあさんの意向に従って定期的に子や孫、特に長女の孫の部屋を回って、拭き掃除をしたりすることだ。彼らが帰ってこなくても、部屋はほこりひとつなく、鏡のように磨き上げられていた……
すべての用事を済ませた後、田原おじいさんはようやく身支度を整え、書類カバンを持って階下に降り、出かける準備をした。しかしちょうどそのとき、若い客が訪ねてきた。軍服を着た松のように凛々しく健康的な若者で、整った顔立ちと明るい笑顔を持ち、親しげに「おじいさん」と呼びかけた。
田原おじいさんは少し驚いた。若者は自分が白石家の長男の孫、白石俊帆だと名乗った。今回は表彰式に参加するために上京し、特別に田原おじいさんと田原おばあさんを訪ねてきたのだという。
白石家の長男の孫が行方不明になっていたことを田原おじいさんは知っていた。突然また現れたので驚いたが、俊帆は当時の状況を詳しく説明し、何も隠さなかった。田原おじいさんは頻りに頷き、俊帆が若くして副営級になり、功績を立て、部隊のエリートとして海外研修に行くことを知ると、とても喜んで彼の肩を叩きながら称賛した。「素晴らしい!さすが将門の虎の子だ、白石家に後継者ができたな!」
客間に招き入れて30分ほど話をすると、俊帆の振る舞いは端正で、話し方も上品だった。軍人としての毅然とした決断力を持ちながらも、文人のような優雅さと博学さも兼ね備えていた。白石家の変遷で長年外で暮らしていたにもかかわらず、名家の子弟としての良い教養を失っていなかった。田原おじいさんはこの若者に好感を抱いた。
田原おじいさんはまだ外出する予定があったので、前もって言っていた30分が経つと、俊帆はすぐに立ち上がって別れを告げた。田原おじいさんは彼が持ってきた2箱の人参を手に取り、持ち帰るように言った。「これは良いものだ、お前の祖父がもっと必要としているよ!」