第331章 亀にも尊厳がある

あの亀を見た後、真理子は頭を上げて裏庭の景色や屋根、塀などを指し示しながら、黒田おじいさんと黒田啓明に話しかけた。知らない人が見れば、祖父と孫と真理子の三人が庭園の風景を鑑賞し、建物の外観装飾について語り合っているように見えるだろう。しかし真理子の指示によって、巨大で精密な守護の結界が黒田おじいさんと啓明の目の前に鮮明に浮かび上がった。

啓明はゆっくりと視線を巡らせ、感動を隠せなかった。黒田おじいさんは黙って考え込んでいたが、内心では啓明と同じく興奮していた。黒田邸に結界が張られていることは、黒田家では三歳の子供でさえ知っていることだが、それを本当に理解し全体像を把握するのは、彼にとっても初めてのことだった!

結界はもちろん黒田家の先祖が残したものであり、本来なら結界図が添えられているはずだった。しかし代々伝わる中で、いつの間にか失われてしまい、後世の人々は守護の結界があることだけを知り、自分の家の結界に迷い込まないようにする程度の理解はあったものの、その真の精髄については知るところが少なく、まして結界の維持や修復などは論外だった。