田口優里は思わず想像した。この男性がもし普通の人のように振る舞えたら、どれほど優雅で格別に美しいだろうか。
今この瞬間でさえ、彼が車椅子に座り、骨と皮だけになっているのに、本来なら恐ろしい容貌のはずだ。
しかし、彼の完璧すぎる目元と眉が、その醜さを押さえ込んでいた。
田口優里は自分が顔フェチであることを認めていた。学生時代、彼女は一目で野井北尾を好きになった。
その後、接触して理解が深まるにつれ、好きという感情は愛に変わっていった。
しかし、この感情が始まったのは確かに容姿からだった。
目の前のこの顔を見ていると、たとえ彼が先ほど言った言葉がとても失礼だったとしても、優里は自分が彼を許せるような気がした。
「病院にはVIP病室があるし、高級幹部用の療養病室もあります...」
「私にふさわしいと思うか?」男性の眼差しは世を見下すようで、傲慢さが当然のように漂っていた。
田口優里は理解できなかった。「宿泊条件があなたの体より重要なのですか?」
「もちろんだ」三井和仁は彼女を横目で見た。「それに、お前の治療レベルがどの程度なのかも、まだ未知数だ」
田口優里は首を傾げた。「それなら、まず針を何本か打ってみましょうか?」
三井和仁は彼女を上から下まで眺めた。「手で刺すのか?」
仕事を始めてから、田口優里は以前の習慣を取り戻し、どこへ行くにも小型で便利な鍼灸道具一式を持ち歩いていた。
彼女は三井和仁の視線の下、慌てることなく、ポケットから小さな布の包みを取り出した。
近くにテーブルがあり、彼女はその布を広げた。中には5〜6センチほどの細い針が数十本あり、銀色に光っていた。
三井和仁の指が少し縮こまった。
田口優里はこの小さな動きを見逃さず、笑いながら言った。「三井さんは針を刺されるのが怖いのではないですか?」
彼女の挑発は拙いものだったが、三井和仁は引っかかった。「そんなはずがない!」
しかし、彼はすぐに気づいた。「お前は私を知っているのか?」
田口優里は最初、彼の身元を確信していなかった。
しかし、明かりがついた後、彼女は分かった。
下半身麻痺で、金と権力を持ち、さらにこれほど美しい若者は、墨都全体でも一人しか見つからない。
三井和仁だ。
三井家の墨都での地位は、野井家に劣らない。