第42章 私と北川さんはとっくに一緒になっていた

30分後、レストランから朝食が届いた。

田口優里は心ここにあらずという様子で、茶碗の中のお粥を見つめたまま、なかなか一口も口にしなかった。

野井北尾は無言のまま、ため息をついた。

先ほど彼が告白した後、田口優里はずっとこの状態だった。

何も言わず、何の反応もない。

彼女が何を考えているのか、どんな答えを自分に返すのか分からず、野井北尾はとても不安だった。

彼は朝食に多くの種類を買っておいたが、テーブルに並べた時、ある問題に気づいた。

彼は田口優里が何を好んで食べるのか知らなかったのだ。

これまではいつも田口優里が彼の好みに合わせてくれていた。

彼は一度も田口優里の好みに関心を持ったことがなかった。

彼の印象では、田口優里は好き嫌いがないようだった。

そう言えば、それは間違いではない。

田口優里は確かに好き嫌いがなかった。

彼女は幼い頃から祖父と一緒に育ち、お年寄りから食べ物を無駄にしてはいけないと教えられていた。

だから、どんな食べ物でも、テーブルに出されたら、おとなしく全部食べていた。

しかし実際には、彼女にも好みはあった。

野井北尾がそれを知らないだけだった。

彼女にカニ入り肉まんを取り分けながら、野井北尾は言った。「お粥も冷めたから、飲めるよ」

田口優里はようやく我に返り、静かにお粥を一杯飲み干した。

朝食を終えると、そろそろ出勤の時間だった。

野井北尾が彼女を送ることになり、二人が車に乗り込むと、田口優里は運転席を見て尋ねた。「伊藤さんは?」

伊藤隆治は、以前の運転手だった。

野井北尾は説明した。「彼は会社の他の部署に異動になった」

昨夜はまだいたのに、今朝早くに異動?

田口優里は数秒間黙った後、口を開いた。「私のせい?」

野井北尾は率直に答えた。「違う。彼は何年も私について働いてきたから、部署で経験を積んで、独り立ちできるようになるんだ」

田口優里はようやく安心した。「それならいいわ」

道中、田口優里はそれ以上何も言わなかった。