第46章 この感情は天地を動かす

田口優里は受け取って、ありがとうと言った。

野井北尾の視線は彼女が持っているバッグに落ちた。「それは何?」

田口優里は隠すつもりはなかった。「三井さんからのお礼の品です。」

野井北尾は眉をひそめた。「なぜ彼からものを受け取るんだ?何をくれたんだ?」

田口優里はまだ中身を見ていなかったが、野井北尾の口調を聞いて、彼女も眉をひそめた。「なぜ受け取ってはいけないの?」

「医者が患者から贈り物を受け取っていいのか?」

「原則的には駄目ですが、三井さんの場合は特別な診療で...」

「三井和仁が贈るものがどれだけ高価か知っているのか?」野井北尾は彼女の言葉を遮り、直接バッグを開けた。「見てみろ。」

田口優里は下を向いて見た。バッグの中には、ハンドバッグが入っていた。

小さくて可愛らしく、洗練されていた。

ロゴは田口優里が知っているものだった。

野井北尾は言った。「これは最新の限定品だ。世界に10個しかない。今いくらまで値段が高騰しているか知っているか?」

田口優里は彼を見つめたまま、何も言わなかった。

野井北尾は数字を言った。

それは地方都市でマンションを現金一括で買える価格だった。

「だから、こんな高価な贈り物を受け取って、どうするつもりなんだ?」野井北尾の目には不満の色が浮かんでいた。「三井和仁という男は、損な商売はしない...」

「野井北尾。」

田口優里は突然口を開き、彼の言葉を遮った。

「何だ?」

「あなたの会社が扱っている事業には、バッグのようなものは含まれていないわよね?」

野井北尾は首を振った。「ない。」

「じゃあ、女性が興味を持つような高級ブランドバッグについて、なぜそんなに詳しいの?まるで自分の持ち物のように」

野井北尾は視線を外し、膝の上に置いていた大きな手をぎゅっと握りしめた。

今日の午前中、丹野特別補佐が特に彼に尋ねた。今年の渡辺雪也の誕生日をどう手配するかと。

野井北尾はすぐに答えた。「以前と同じように、適当に買って彼女に届けてくれ。」

三井和仁と同様に、野井北尾が贈る贈り物も当然ながら高価なものばかりだった。

そして彼は渡辺雪也に負い目を感じていたので、このような形で償うしかないと思っていた。