午後、田口優里は野井北尾にメッセージを送った。
亀山直之が海外から戻ってくるが、墨都に着くのは夜になるだろう。
まだ診察はしていないが、亀山直之の体調について、田口優里は大まかな推測を持っていた。
いくつかの漢方薬は貴重で、偽物も多く出回っている。病院でさえ、薬局の在庫の品質は最高とは言えない。
亀山直之にはそれだけの条件があるのだから、当然最高のものを使うことができる。
野井北尾は人に準備させ、さらに田口優里に何時に仕事が終わるか尋ね、迎えに行くと言った。
田口優里はもう返信する余裕がなかった。
また忙しくなっていた。
上尾剛はいつも早めに迎えに来ていた。田口優里は自分で行けるから迎えに来なくていいと言ったことがあった。
三井和仁は知っていた。もし田口優里が自分で来るなら、八割方野井北尾が送り迎えすることになる。
彼はあいつにそんな機会を与えるつもりはなかった。
だから毎日早くから上尾剛を待たせていた。
上尾剛はもう年配だったので、田口優里も断りづらかった。
田口優里は仕事を終え、上尾剛について外に向かった。
上尾剛はドアを開けた。「田口先生、どうぞ」
田口優里はありがとうと言って車に乗り込み、顔を上げると、後部座席が一人分しかないように改造されていることに気づいた。
もう一方の座席には、今は車椅子が置かれていた。
車椅子に座った男性は、端正で気品があり、目元に情感を湛え、唇の端を上げて彼女を見つめていた。
田口優里は非常に驚いた。「どうしてここに?」
車椅子に座っていても、三井和仁の優雅さと美しさは損なわれていなかった。
彼は車椅子の肘掛けに肘をつき、片手で顎を支え、笑いながら言った。「驚いた?」
喜びなんてどこにもなく、ただ驚いただけだ。
田口優里は答えずに、逆に尋ねた。「長く待っていたの?」
「そうだよ」三井和仁は言った。「30分以上待ったよ。田口先生、墨都全体を見渡しても、私をこんなに長く待たせるのは、あなたが初めてだ」
「誰も三井さんに待てなんて言ってないでしょう」田口優里は急いで話題を変えた。「でも、今日はどうしてここに?」
上尾剛が前から説明した。「若様は今日会社に行かれて、帰りに…」
「帰りにちょうど道順だったんだ」三井和仁が続けた。「ついでにあなたを迎えに来たんだよ」
道順?