黒川孝雄は病院を出るとすぐに野井北尾に電話をかけた。「昼間、時間ある?」
野井北尾はちょうど会議を終えたところで、ネクタイを緩めながら尋ねた。「どうしたの?」
「ここ数日、眠りが浅くてね。優里のところに行って漢方薬を処方してもらったんだ」
野井北尾は笑った。「亀山直之の件でショックを受けたんじゃないか?」
「それもあるかもな」
「俺の嫁、すごいだろ?」野井北尾はまた自慢せずにはいられなかった。
得意げな口調は隠しようがなかった。
そもそも彼は隠そうとも思っていなかった。
黒川孝雄は軽く笑い、心の奥の苦さを隠した。「すごいよ」
「だろう?」野井北尾は妻を褒め称えた後、ようやく尋ねた。「どう?他に体の不調はないか?」
「ない」黒川孝雄は直接聞いた。「昼食を一緒にどうだ?」