第96章 植物状態の患者が目覚めた

田口優里は病室に入ると、山下青美が藤原浩一の体を拭いているところだった。

「田口先生」山下青美は挨拶した。

田口優里はうなずいた。

彼女はマスクをしていたので、山下青美は彼女の表情を見ることができなかったが、その漆黒で静かな瞳を見て、思わず緊張した。

田口優里は簡単に説明し、藤原浩一の肩と四肢に拘束帯を固定した。

多くを語らず、手袋をはめ、消毒し、針を刺した。

傍らにいた山下青美は、緊張のあまり手のひらに汗をかいていた。

期待はしていなかったが、もしも...奇跡が起きたら?

田口優里が患者に施した経穴はすべて強い刺激を与える穴位で、通常の鍼治療は約20分だが、これらの穴位は最大でも3分しか持続できない。

藤原浩一は植物状態だったため、田口優里は5分間に延長した。

田口優里が鍼をするたびに、藤原浩一の体は震え、時には両手が無意識に動くこともあった。