二人とも心に思うことがあり、かなりお酒を飲んでいた。
露出の多い服装の女性が部屋を間違えて入ってきた時、隣の個室のドアが開いていたらしく、音楽や騒がしい声が一斉に響いた。
間違えて入ってきた女性は、違うと気づいて引き返そうとしたが、部屋の中の二人の男性を一目見た。
一人は冷たく気品があり、もう一人は物腰の柔らかい美男子で、どちらも非凡な存在だった。
職業柄、彼女は無意識に近づいて誘惑しようとしたが、男性の冷たい視線に触れた瞬間、心臓がドキリとして、すぐに身を翻して出て行った。
ドアが閉まり、部屋の中は一気に静かになった。
隣の賑やかさと比べると、ここの静けさは恐ろしいほどだった。
実際、野井北尾と黒川孝雄は二人とも賑やかなのが好きな人間ではなかった。
友人を呼んで遊び騒ぐ習慣もなかった。