第143章 金持ちは一人も良い人はいない

田口優里はびっくりして「どういう企みですか?」と尋ねた。

河井孝志は周りに誰もいないことを確認してから、小声で言った。「松下牧野は独身だと聞いたし、君はこんなに綺麗だし……」

田口優里は笑うに笑えず「松下さんは40代でしょう?私の父親とほぼ同じ年齢ですよ」

「何もわかってないな!」河井孝志は焦って彼女に説明した。「松下家は東京で絶大な権力を持っているんだ。彼のような年齢の男性は、まさに魅力的な時期なんだよ」

田口優里は微笑んで「でも私は彼に魅了されていませんよ」

「まだ言い終わってないんだ」河井孝志は彼女を睨みつけた。「君の考えは二の次だ。重要なのは彼の方だ。若くて美しい女性を好まない男がいるか?彼が君に気があれば、君は終わりだ!」

「そんなことはありません」田口優里は松下牧野との接触を思い出した。「彼はとても紳士的です」

「紳士のふりなんて誰でもできる」河井孝志は熱心に諭した。「彼は君の好感を得ようとしているんだ!」

「そうは見えませんけど……」

「君はまだ若くて経験が足りない。とにかく、私の言うことを聞いて、これからは彼と距離を置くんだ、わかったか?」

河井孝志の恩師は田口優里の祖父を非常に尊敬していたため、特別に河井孝志に田口優里をしっかり面倒を見るよう頼んでいた。

だから河井孝志は心配でたまらなかった。

田口優里は彼の好意を理解していたが、松下牧野と接するとき、本当に彼が自分に対して他意がないと感じていた。

河井孝志はさらに忠告した。「彼が見た目がいいからって、人間のふりをした犬みたいなもんだ。金持ちは、一人もまともな人間じゃない!」

田口優里は微笑んで「それって……お金持ちへの恨みですか?」

「そういうわけでもない。医者としてこの何年か、権力者とも多く接してきた。多くを知れば、自然と多くの道理がわかるようになる。とにかく、君は十分注意するんだ」

河井孝志のこの忠告があったため、松下牧野が再び田口優里を訪ねてきたとき、田口優里は彼との距離をより意識するようになった。

松下牧野は田口優里を食事に誘いたいと言った。

感謝の気持ちを表すためだと。

田口優里は丁重に断った。

河井孝志がそれを知ると、「やっぱりな」という顔をした。