田口優里は今や漢方科の人間なので、腫瘍外科のこちらに予定があっても、まず井田部長と河井医師に許可を得てから、他科の手伝いができるのだ。
彼女が漢方科に戻ると、また松下晴彦の治療に行った。
その後、退勤時間になった。
野井北尾はここ数日姿を見せないが、彼の食事は毎日時間通りに届けられていた。
彼は田口優里のマンションの下で人を待たせ、田口優里を見かけると後をついて食事を届けさせていた。
本当に会わず、邪魔をしないという約束を守っていた。
三井和仁も喧嘩した日以来、姿を見せていなかった。
しかし今夜、退勤後、食事を済ませた田口優里は自ら三井和仁に電話をかけた。
三井和仁は以前は極度に自己陶酔的で、世の中に彼の目に適う女性はいないと思っていた。
また、彼の魅力を無視できる女性もいないと。