田口優里が去る前に、墨都のすべての事柄を手配しておいた。
入院患者、外来患者、そして手術室の事柄まで。
星野直樹は彼女に行ってほしくなかった。
彼女がいれば、手術の難易度が下がるからだ。
幸い最近の手術では、田口優里はいつも佐藤政夫と一緒に担当していたので、鍼灸のツボについても佐藤政夫はよく理解していた。
しかし星野直樹の心の中では、やはり田口優里の方が安心できると思っていた。
彼女が行くと決めたら、誰も止められなかった。
出発前、田村若晴はあれこれ心配して、食べ物や日用品、衣類など、大きなスーツケース二つ分を用意した。
田口優里は苦笑いした。「向こうでも買えるわよ、そんなに持っていく必要ないでしょう?」
「他のものは買えるけど、墨都の地元のものが一番でしょ。食べたくなったときに買えなかったらどうするの?」