それに連座して、河井孝志も巻き込まれ、美色に目がくらんで、植物状態の患者を治療できると妄想したと言われていた。
しかも、ベッドで5、6年も昏睡状態にある植物人間だ。
田口優里が狂ったのに、河井孝志までも彼女に付き合って狂ってしまった。
人々が何を言おうと、田口優里は静かに自分のことをしていた。
河井孝志が外来診療をしているとき、彼女はついて行って診察を手伝った。
外来がないときは、病棟にいて、カルテを書いたり、資料を調べたりしていた。
東京病院は名が知れており、患者も多い。
河井孝志の外来は患者数が少なくなく、多くの人が評判を聞いてやってくる。
結局、国民の心の中では、東京は政治・経済・文化の中心であり、東京病院は当然最も優れた場所だと思われている。
田口優里はそのため、多くの難病や珍しい症例を見ることができた。
彼女の日々はそれによって特に充実していた。
一日三食はほとんど食堂で済ませていた。
三井和仁と一緒に食事をする機会はなくなった。
しかし、それでも三井和仁はほぼ毎日訪ねてきて、長居はせず、田口優里と少し話して、30分ほど滞在して帰っていった。
田口優里も彼を追い出すわけにもいかなかった。結局、三井和仁は毎回彼女に脈を診てもらうという名目で訪ねてきたのだから。
田口優里から見れば、三井和仁の体はすでにほぼ回復しており、リハビリも積極的に行っていた。
今では彼の食事も睡眠も正常で、あと1、2ヶ月もすれば、普通の人と変わらなくなるだろう。
野井北尾は海外に丸10日間滞在していた。
毎日朝早くから夜遅くまで、交渉すべきことが多く、しかもすべて彼が決断しなければならない事柄ばかりだった。
ようやくすべての事を処理し終え、丹野勉が仕事の報告を終えると、野井北尾は眉間を押さえ、疲れた表情を浮かべた。
「4時間後の飛行機です。社長は2時間ほど休めます」
「彼女はどうだ?」
名前を言わなくても、丹野勉は誰のことか分かっていた。「毎日決まったルートで、時間通りに出勤しています」
「体調は?」
丹野勉は急いで答えた。「一日三食すべて食堂で食べていて、顔色も良さそうです」
野井北尾はうなずいた。
丹野勉は彼を見て、言いかけては止めた。
「言え」