第157章 こんな時に邪魔をするな

やはり、回復の兆しが見えない松下晴彦を見た後、老婦人は口を開いた。「井田部長、私の孫の主治医と、もう一人研修医がいるって聞いたけど。会うことはできるかしら?」

松下牧野は漢方科に数百万円の設備を寄付し、さらに病院には数千万円の手術室を一つ寄贈した。老婦人は福の神の母親であり、病院側は当然ながら粗略にはできなかった。

特別に井田修平を接待役として呼んだのだ。

井田修平は説明した。「田口先生は外科に行っていて、ここにはいません」

老婦人は教養がなくても、最低限の常識は心得ていた。「彼女は漢方科の医者なのに、外科で何をしているの?呼び戻せばいいじゃない」

井田修平は言った。「田口先生は手術に参加しているので、今は戻れません。おそらく…」

彼は腕時計を見下ろした。「2時間後になるでしょう」

老婦人がここに来たのは、田口優里に威厳を見せつけるためだった。

二十歳そこそこの若い娘が、どうやって自分の息子を魅了したのか見てみたかった。

長年、息子の心にはあの女性しかいなかった。道理から言えば、そう簡単に心を動かされるはずがない。

だからこそ、老婦人はますます好奇心を抱いた。

田口優里がどんな人物なのか、どんな手腕を持っているのか見てみたかった。

2時間は長くもなく短くもない。

しかし老婦人がここでじっと待つはずもなかった。

「少し買い物に行って、後で戻ってくるわ」彼女は傲慢な口調で言った。「その時は彼女に私を待たせなさい」

井田修平は急いで言った。「もし晴彦さんの病状について知りたいなら、河井医師からも説明を受けられますよ」

「河井医師は信頼していますよ。でも、その田口先生は研修に来ているって聞いたから、安心できなくて、会ってみたいのです」老婦人は顔を引き締めて言った。「それはいけないことかしら?」

井田修平はもう何も言えなかった。

ただ同意するしかなかった。

田口優里はその時、外科にいた。

腫瘍外科だ。

患者は辺鄙な山岳地帯から来た少数民族で、胸部の腫瘍がバスケットボールほどの大きさになっていた。

最初、患者は地元で診察を受けたが、県立病院では手の施しようがなく、上級病院への紹介を勧められた。

しかし患者の家庭環境が良くなかったため、治療を諦めていた。