二人が朝食を取っている時、野井北尾はすぐ近くに座っていた。
邪魔をしに来ることもなく、その距離では二人の会話は全く聞こえなかった。
三井和仁は彼を見かけていた。
しかし田口優里は向きの関係で、野井北尾が自分の後ろ近くにいることを知らなかった。
三井和仁と田口優里は食事の後にお茶とお菓子を楽しんでいる間も、野井北尾はずっと動かずに座っていた。
彼のどこが自分より優れているというのか?
せいぜい、彼が田口優里を数年早く知っていたということだけだ。
しかしまさにその数年が、彼を完全な敗北へと導いたのだ。
「三井和仁、ごめんなさい……」
三井和仁は目を閉じてから開き、微笑んだ。「謝らなくていいよ。優里ちゃん、誰を好きになるかは君の自由だ。僕は……」
彼は少し間を置いて続けた。「感情の問題は、君も分かっているだろう。僕が止めると言っても、簡単に止められるものじゃない。」
彼は田口優里にイチゴ大福を一つ取ってあげた。「少し時間をくれないか?約束するよ、君に迷惑をかけることはしない。」
田口優里はそれを受け取って皿に置いた。「こんなのあなたに対して不公平すぎると思って。」
「そんな心の負担を感じる必要はないよ。僕が君を好きなのは、僕の問題だ。君が応えてくれても拒絶しても、僕は受け入れる。」
言葉ではそう言い、理屈もそうなのだが。
しかし田口優里の心の中では、すでに三井和仁を友人として見ていた。
三井和仁は彼女のために多くのことをしてくれた。彼女は木の人形ではなく、感情もある。
ただ、彼女は自分の三井和仁に対する感情が、異性間の心ときめくような種類のものではないことをはっきりと知っていた。
彼女の青春時代に、彼女の心を動かしたのは、常にたった一人の男性だけだった。
三井和仁もとても優秀だ、それは彼女も認めていた。
しかし三井和仁を友人としても、田口優里は彼を田村深志のような友人として見ることができないことをよく分かっていた。
三井和仁は腹が深すぎる。彼女に常に優しくしてくれていても、田口優里は彼に対して心の壁を下げることができなかった。
こう言うのは三井和仁に対して不公平かもしれない。
結局、三井和仁が他の人にどう接しようと、彼女に対しては……常に特別だった。
「ただ、優里ちゃん、昨夜のことについて考えたことはある?」