田口優里は朝になってようやく違和感に気づいた。
上着についた香りはとても薄く、顔を埋めないと嗅ぎ取れないほどだった。
でも今は、まるで自分が野井北尾の香りに包まれているようだった。
彼女はいつものように顔をすりすりした。
頬が触れた場所は温かく、滑らかで、適度な硬さと弾力があった……
田口優里は後になって気づき、目を開けた。目に映ったのは、野井北尾の部屋着がはだけて露わになった胸元だった。
胸板は広く、薄い筋肉に覆われていて、触れると心地よかった。
田口優里の頭はまだぼんやりとしていて、体が意識より先に動き、反応する前に、また彼の胸元にすりすりしていた。
彼女はすりすりするだけでなく、全身を彼に密着させ、心地よさに小さなため息をもらした。
野井北尾:……
体が硬直していた。
時間が間に合うかどうかわからないが、今獣のように欲望のままに行動したら、田口優里は普通に出勤できるだろうか?
そんな考えが彼の頭をよぎったが、すぐに消えた。
田口優里が出勤することはもちろん、今彼女は妊娠中で、普段の愛情表現でさえ、野井北尾は力加減に気をつけ、激しくなりすぎないようにしていた。
田口優里の反応はさらに遅く、しばらくすりすりした後、ようやく頭がはっきりしてきた。
野井北尾の腕の中で小さな顔を上げ、黒白がはっきりとした少し茫然とした大きな目で彼を見つめ、まばたきした。
野井北尾は胸の高ぶりを抑え、目には笑みだけを残して言った。「起きた?」
田口優里はまたまばたきして、小さな声で言った。「夢を見てるの?」
野井北尾は思わず頭を下げて彼女にキスをした。「夢じゃないよ、帰ってきたんだ」
カーテンはまだ閉まったままで、外の光は少しも漏れてこなかった。
田口優里は舌先で軽く彼の唇に触れた。
二人は同時に震え、激しい鼓動が心の底から湧き上がり、熱い波を引き起こした。
思慕の念はキスとともに静かに溶け、舌先が指の代わりに田口優里の服をはだけさせ、湿った感触が彼女の体に戦慄を走らせた。
野井北尾は最初はゆっくりとしていたが、すぐに彼の呼吸は乱れ、指で田口優里の柔らかな体を愛撫しながら、内なる欲望を抑えつつ、低い声で言った。「いいかな……」
田口優里はキスで答えた。
野井北尾は「小別勝新婚」という言葉の意味を身をもって体験した。