松下牧野はこれを聞いて、すぐに眉をひそめた。「彼女が優里ちゃんに会いたいと言ったのか?」
「そうだ」松下晴彦は言いながら老婦人を見た。
老婦人は今、慈愛に満ちた表情で彼に手を振った。
松下牧野は言った。「電話を彼女に渡してくれ」
松下晴彦は携帯を渡した。「おばあちゃん、父さんが話したいって」
老婦人は電話を受け取り、先に口を開いた。「牧野、お母さんが考えたんだけど、この件は、お母さんが間違っていたわ。どう言っても、彼女はあなたの血を引いているし、彼女のお母さんももういないし、彼女も不幸な子よ。私はおばあちゃんとして、どうしてそんなに冷たくできるのかしら、彼女を認めないなんて」
ここまで言って、老婦人は鼻をすすり、ため息をついた。「私もただ気持ちが納得いかなかっただけで、晴彦が説得してくれて、私も考え直したの。松下家の子どもなら、家に迎え入れましょう」
老婦人は本来、自分がこれほど低姿勢になり、これだけ言えば、松下牧野も折れるだろうと思っていた。
二人が元通りの仲になると。
しかし彼女が予想していなかったのは、松下牧野が言ったことだった。「まず東京に帰ってくれ。会う件は、また後で話そう」
老婦人はすぐに不満そうな顔をした。「どういうこと?私がこの老いた顔をさらして謝ったのに、あなたはまだ何を望むの?」
松下牧野は言った。「私と優里ちゃんの間には、まだ処理すべきことがある。それが片付いたら、自然とあなたに会わせるよ」
老婦人は不思議そうに尋ねた。「何を処理するの?あなたたちは親子でしょう、親子鑑定もしたのに、何を処理するの?」
「あなたは気にしないで」松下牧野の口調はとても断固としていた。「まず東京に帰ってください。私が人を手配して送り届けます」
彼はそう言うと、すぐに電話を切った。
田口優里は今や彼のことさえ認めていないのに、どうして老婦人に会わせることができるだろうか。
老婦人は口では良いことを言っているが、実際に会ったらどうなるか分からない。
松下牧野は彼女を全く信用していなかった。たとえ彼女の言うことが本当だとしても、優里ちゃんが彼を認めるまで待つべきだった。
松下牧野はどんなリスクも冒したくなかった。
翌朝早く、彼は人を呼んで老婦人を送り出した。
松下晴彦と鈴木真珠も一緒に去っていった。