この点から見ると、岡田羽一は本当に女性をあやす経験がないことがわかる。
田村若晴は元カレの口のうまさを思い出した。油断のない舌、巧みな話術。
当時は自分もそれを気に入っていた。
何に心を奪われていたのかわからない。
今比べてみると、岡田羽一は本当に彼女の好みだった。
以前は本当に目が見えていなかった。
願わくば今回、彼女が探し求めているのは、自分の良き伴侶であることを。
田村若晴はまだ顎を支えながら、彼に尋ねた。「どう?結果は出た?」
岡田羽一は携帯を置き、顔を上げて彼女を見た。「出たけど、役に立つかどうかわからない」
田村若晴は瞬きをした。「何?」
「こうだ」
岡田羽一は突然立ち上がり、身を屈めて田村若晴の手首を握り、薄い唇を彼女の頬に押し当てた。
田村若晴は全く反応できず、ただ淡い清涼な気配が急に近づいてきたのを感じた。
彼女が何かを捉える前に、その気配はまた離れていった。
岡田羽一が...彼女にキスした...
田村若晴は恥ずかしがり屋でも内向的な性格でもなかった。
最初に岡田羽一に目をつけた時、彼女の頭の中でいろいろな妄想がなかったわけではない。
男は色を好むと言うが、女もそれに劣らない。
田村若晴はハイヒールを履いて岡田羽一の傍を通り過ぎる時、頭の中では彼を壁に押し付けている姿を想像していた。
彼が息もできないほどキスする。
禁欲的な男神が彼女に蹂躙される、考えただけでもゾクゾクする。
しかし彼女が想像していたことと現実が正反対だとは思いもよらなかった。
まあ、岡田羽一は彼女を壁に押し付けてキスしたわけではない。
でも彼女は、岡田羽一がこんなに大胆で、二人が関係を確認したばかりなのに、キスしてくるとは思ってもみなかった。
しかし正直に言うと、これはキスとは言えないかもしれない。
軽く触れただけで、すぐに離れた。
あまりにも速かった。
田村若晴は少し物足りなさを感じた。
岡田羽一の耳先は真っ赤だった。
彼は見せかけほど冷静ではなかった。
田村若晴は微笑んで口を開いた。「岡田教授」
岡田羽一は彼女の目を見る勇気がなかった。
どう言っても、彼のこの行動は少し無礼だった。
先に彼女の同意を得るべきだったのだろうか?
田村若晴は、岡田羽一が後になって恥ずかしくなったのだと気づいた。