田口艶子が二見玲香に電話をかけてきて、二見玲香はようやく安心した。
しかし、お金のことを聞く前に、相手が電話を切ってしまった。
二見玲香はとても心配だった。
今の急務はとにかくお金を手に入れることだ。
しかし田口艶子以外には、今は誰も頼れそうにない。
以前の友人たちに連絡しても、ほとんど返事がなかった。
たまに返事をくれた二人も、都合が悪いと直接言われた。
二見玲香の携帯には最後に数人の連絡先が残っていて、そのうちの一人が田村若晴の母親だった。
以前は田村若晴と田口優里の関係が良かったため、二つの家族は実際に交流があった。
しかし田村若晴の両親は純粋に田口優里のために、田口義守と顔を合わせても喧嘩にならないようにしていた。
結局、当時の田口義守はまだ田口優里の父親だった。
外での様々な場面で会うと、二見玲香はいつも積極的に田村若晴の両親に話しかけていた。
彼らも強引な性格ではなかったので、面子を保つために彼女と少し会話をしていた。
そのため、二見玲香は彼らの連絡先を持っていた。
彼女も知っていた、田村若晴の両親は実際彼女を見下していることを、彼女が不倫相手だったからだ。
しかし今このような時に...おそらく彼らは田口優里の顔を立てて、自分にお金を貸してくれるかもしれない。
ただ、二見玲香が思いもよらなかったのは、電話をかけたとき、出たのが田村若晴だったことだ。
偶然にも、田村若晴はめったに実家に帰らないが、今日は田村院長の誕生日で、彼女だけでなく田村深志の家族も全員来ていた。
田村若晴の母の携帯が鳴り、田村若晴が見ると、登録されていない番号だった。
彼女はキッチンにいる人に声をかけた。「お母さん、電話よ!」
田村若晴の母はまだキッチンで忙しく、「誰?」と聞いた。
「わからない、知らない番号よ。」
「あなたが出てくれる?」
田村若晴はそれで電話に出た。
二見玲香も相手が彼女の番号を保存していないとは思わなかった。
電話がつながるとすぐに彼女は言った。「晴美のお母さん、私は二見玲香ですが...」
彼女が言い終わる前に、田村若晴が驚いて口を開いた。「あなたは誰だって?」
二見玲香は一瞬固まった。
彼女は田村若晴の声だとわかった。
以前なら、おそらく二見玲香は電話を切っていただろう。