田村若晴はやっとのことで彼を押しのけ、車を発進させた。
道中、岡田羽一は何も言わず、ただ横で彼女を見つめていた。
田村若晴は彼の視線の熱さを感じることができた。
もし視線が実体化したら、彼女は今頃きっと全身を撫で回されていただろうと思った。
岡田羽一というこの犬男は、服を着ていれば人間らしく見えるが、実は偽善者だ。
服を脱げば獣と変わらない。
二人がこんなに長く離れていたのだから、今夜はきっと激しい夜になることは想像に難くなかった。
幸い、岡田羽一にはまだ良心があり、家に帰ると、まず田村若晴にちゃんと食事をさせた。
食事は彼が前もって注文しておいたもので、すべて保温されていた。
食事の後、二人はソファで映画を見た。
見ているうちに、岡田羽一は大人しくしていられなくなった。
彼の息遣いが耳元で聞こえてきて、田村若晴は彼を押しのけた。「まだこんな時間よ!」
「早くやって、早く寝よう」岡田羽一はキスをしながら言った。「明日手術があるんだろう?遅くまで起きていたら心配だ」
「心配なら触らないで...んっ...」
「それはダメだ、これも愛情表現の一つだよ」
実際、田村若晴の体力はかなり良い方だった。彼女はフィットネスの習慣があり、普段の手術にも一定の体力が必要だった。
しかし岡田羽一と比べると、彼女はやや劣っていた。
だが彼女が明日手術があることを考慮して、岡田羽一はあまり無茶はしなかった。
岡田家の問題をどう処理したかについて、田村若晴は何も聞かなかった。
彼女が冷淡だからではなく、岡田家がどうなろうと自分には関係ないと思っているわけでもない。
ただ多くのことは、彼女が気にしようがしまいが、結果は変わらないからだ。
岡田羽一がうまく処理できたなら、彼女はもちろん嬉しい。
岡田羽一がうまく処理できなくても、彼女は失望しない。
結局、学者に不得意なことをさせるわけにはいかないのだから。
しかし岡田羽一の様子を見ると、ほぼ解決したようだった。
翌朝、田村若晴が病院に着くとすぐに、田口優里から電話がかかってきた。
「岡田教授が戻ってきたの?」
彼女の声には冗談めかした調子があった。
田村若晴は朝起きてからも、岡田羽一にしばらく弄ばれていた。
今でも腰が痛い。