第489章 一度だけ自分勝手に

そのとき、野井北尾の病気は良くなるどころか、悪化する可能性もあるだろう！

しかし、彼に見せなければ、野井北尾はこの難関を乗り越えられないだろう。

田口優里は板挟みになり始めた。

それ以上に、心が痛んだ。

彼女が宝物のように大切にしている男が、他の女に狙われ侮辱されたことに、田口優里は胸が締め付けられるような思いだった。

午後になって野井北尾が戻ってきても、田口優里はまだ決断できていなかった。

この件を、一体どうやって野井北尾に伝えればいいのだろう？

どうすれば彼が心の結び目を解きながらも、あの録画を見なくて済むのだろうか？

田口優里が口を開く前に、野井北尾が先に尋ねた：「どうしたの？」

田口優里は心虚になり、急いで聞き返した：「何がどうしたの？」

「何か心配事があるように見えるよ。」野井北尾は言った：「今日、武田佐理に会ったからかな？彼女に会う必要はないって言ったのに。」

田口優里が武田佐理に会いに行ったことは、野井北尾は知っていた。

田口優里も彼に隠すつもりはなかった。

ただ、彼女が言ったのは武田佐理ともう少し話し合いたいということだけだった。

武田佐理が録画を持っていることについては触れていなかった。

「ダーリン……」田口優里は彼の肩に寄り添って：「一つ相談してもいい？」

野井北尾は彼女の腰に手を回し、頭を下げて彼女の額にキスをした：「言ってごらん、何でも聞くよ。」

「何でも聞いてくれるの？」田口優里は笑った：「野井家の財産が欲しいって言ったら、くれる？」

野井北尾も笑った：「野井家の財産は、君のものじゃないのかい？欲しいって言う必要ある？僕のものは君のものだよ。」

「あなたのお金だけが目当てだったらって心配しないの？」

野井北尾は言った：「もし僕がお金で君を引き止められるなら、それはそれで嬉しいよ。結局のところ、僕はお金を稼ぐのが得意だと思うからね。でも……優里ちゃん、自分がどれだけ裕福か知らないの？」

この頃、他のことは言わなくても、亀山家の人々だけでもかなりの額を彼女に与えていた。

さらに、松下牧野は一度ならず、彼の資産はすべて田口優里のものだと言っていた。

そう考えると、田口優里の個人資産は、彼とほぼ同等になりつつあった。

田口優里は笑った：「人間は欲深いものよ、持っていても、もっと欲しくなるの。」