病院では、夕方になっても患者が出入りしていた。
「次の方。」
畑野志雄はパソコンにデータを入力しながら、眉間にわずかに不満の色を浮かべていた。
今自分が医者であることを忘れなければ、この女性はきっと彼に怒鳴られて追い出されていただろう。
「畑野先生、私の足はまだ痛いんです。」
女性患者はとても若く、20歳前後に見えた。
恋に勇敢だった。
彼女のすねは打撲して、数針縫っていた。
看護師は礼儀正しくこの女性患者に先に出るよう促した。「お嬢さん、畑野先生はもう痛み止めの薬を処方されましたので、お薬を受け取ってお飲みください。他の患者さんもお待ちですので。」
女性患者は笑いながら続けた。「最後に一言だけ言わせてください。畑野先生、彼女はいらっしゃいますか?」
畑野志雄は椅子の背もたれに寄りかかり、マスクの下の薄い唇が上がった。「私には妻がいます。子供はもう6歳です。」