第125章 彼女を轢き殺す

畑野志雄が手術室から出てくると、木場左近から送られてきた奥田梨子に関するメッセージを見た。

木場左近は優秀な助手として、奥田梨子が幸福ガーデンの水道光熱費を調べるよう頼んだ時、まず何が起きたのかを調査するよう人を派遣していた。

【ボス、これは例の若い男性が木村大綱を病院に連れて行った映像です。追跡するよう人も派遣しました】

畑野志雄は映像を開いて見た。

映像に映る若い男性は、キャップで顔の大半を隠し、身長は目測で176cmほど。

ゆったりとした服を着ていて、体格は痩せてもいないが特に筋肉質でもないように見える。

畑野志雄は人体構造に詳しく、人差し指と親指でスマホの画面を広げ、映像を拡大した。

彼は木場左近に電話をかけた。「この男は本来痩せ型のはずだ。偽の筋肉シャツを着ていて、靴もシークレットシューズだ。左足が不自由で、逃げる時には偽装の筋肉シャツを脱ぐだろう」

畑野志雄は木場左近との電話を切ると、奥田梨子に電話をかけた。

彼は片手で白衣の上着を解きながら、電話のツーツーという音を聞いていた。

出ないのか?

畑野志雄はもう一方の手でスマホを持ち、白衣を脱いでハンガーにかけた。

彼は奥田梨子のボディガードに電話をかけ、彼女の居場所を確認した。「30分ほどでそちらに着く」

向こうのボディガードは了解した。

畑野志雄は車を運転してショッピングモールに到着し、地下2階のエンタメシティーへ向かった。

彼は奥田梨子を見つけた。

彼女が小さな釣り竿を持って座り、おもちゃの魚を釣っているのを見た。

周りは小さな子供ばかりで、大人は彼女だけが釣りをしていた。

畑野志雄は財布から100元札を取り出し、コインに両替した。コインがチリンチリンと落ちてきた。

彼はさらにサービスカウンターで10元分のコインを小さな釣り竿と小さなバスケットに交換した。

畑野志雄は奥田梨子の隣の低い椅子に座り、長い脚を窮屈そうに曲げて、見ているだけで不快そうな様子だった。

奥田梨子はぼんやりしていたが、無意識に振り向くと畑野志雄がいて、少し驚いた。

「畑野さん、仕事終わりですか?」

「ああ、早退した。彼女と過ごすために休みをもらった」