第155章 本物の畑野志雄

奥田梨子はもう、そばにいる男が畑野志雄なのかどうか疑うことはなくなった。

彼が無事に帰ってきたことを知っていた。

ただ、彼が無事に戻ってきたことを知っていても、時々畑野志雄の顔をじっと見つめてぼんやりすることがあった。

そんな時、男は彼女を笑って言うのだった。「俺がかっこよすぎて見とれてるのか?」

奥田梨子は呆れた。今もまだ腫れているあの顔が、かっこいいなんて全く関係ない。

すでに病院で数日過ごした奥田梨子はようやく退院できることになった。

車はすでに病院の外で待っていた。

奥田梨子は畑野志雄に守られながら車に乗り込んだ。

畑野志雄は彼女のシートベルトを締め、手に本を取り、胎児に聞かせるために読もうとした。

奥田梨子はただうんざりして、「まだ一ヶ月も経ってない胎児は何も理解できないのに、結局あなたは私に読んでるの?それとも自分自身に読んでるの?」と言った。