誰かが彼女を陥れようとしている。
奥田梨子は眉をひそめ、別の病院で心理科を受診することにした。
彼女は自分が被害妄想症を患っているとは信じていなかった。
川木信行は必死に落ち着こうとしている奥田梨子を見て、「あれは緑の蛇だ、毒はない。外で待っていてくれ」と言った。
彼は上着を手に持って中に入ろうとした。
奥田梨子は川木信行の袖をつまみ、「待って、何をするつもり?専門の捕獲業者に電話するわ」と言った。
男は目を伏せ、彼の袖にある二本の白い指を見た。
たった二本だけ、とても遠慮がちな仕草だった。
「毒はないから、俺が捕まえる。専門家が来るまでに、部屋の中に逃げ込むかもしれない」
彼は冷静に事実を述べた。
奥田梨子はその光景を想像し、全身が鳥肌立った。
彼女が寝ている時に、突然ベッドの上に蛇が現れたら…と考えただけで。
奥田梨子はすぐに川木信行の袖をつまんでいた指を離した。
川木信行は軽く口角を上げ、手にしていた上着を奥田梨子に渡した。
彼は足音を軽くしてその金のなる木の鉢に近づいた。
奥田梨子はドアノブを握り、準備していた。もし蛇が彼女の方に向かってきたら、すぐにドアを閉めるつもりだった。
緑の蛇は誰かが近づいてくるのを感じ、体をくねらせて素早く逃げ出した。
一本の足がその尻尾を踏み、そして七寸を掴まれた。
男の長い指が緑の蛇を掴んでいた。
彼は振り返り、ドアの外にいる奥田梨子を見上げた。
川木信行は奥田梨子がドアを閉め、彼と蛇を中に閉じ込めようとする動きをしているのを見た。
彼は皮肉げに奥田梨子を見た。
「入ってきていいよ、何か入れ物を探して、これを中に入れられるようにして」
奥田梨子は気まずそうに笑い、中に入って緑の蛇を一目見ると、鳥肌が立った。
彼女はキッチンへ行き、瓶などの容器を探した。
川木信行はここに初めて足を踏み入れた。
インテリアのスタイルはとても温かみがあった。
奥田梨子と畑野志雄がかつてここに住んでいた。
彼の瞳の色が少し暗くなった。
奥田梨子はキッチンで、ちょうど空の瓶を見つけた。
それは畑野志雄が以前、彼女が漢方薬を飲むのが辛そうだったので、特別に買ってきたキャンディーの瓶だった。
彼女は残りのキャンディーを袋に入れ、空の瓶を持って出た。