誰かが彼女を陥れようとしている。
奥田梨子は眉をひそめ、別の病院で心理科を受診することにした。
彼女は自分が被害妄想症を患っているとは信じていなかった。
川木信行は必死に落ち着こうとしている奥田梨子を見て、「あれは緑の蛇だ、毒はない。外で待っていてくれ」と言った。
彼は上着を手に持って中に入ろうとした。
奥田梨子は川木信行の袖をつまみ、「待って、何をするつもり?専門の捕獲業者に電話するわ」と言った。
男は目を伏せ、彼の袖にある二本の白い指を見た。
たった二本だけ、とても遠慮がちな仕草だった。
「毒はないから、俺が捕まえる。専門家が来るまでに、部屋の中に逃げ込むかもしれない」
彼は冷静に事実を述べた。
奥田梨子はその光景を想像し、全身が鳥肌立った。
彼女が寝ている時に、突然ベッドの上に蛇が現れたら…と考えただけで。