会議室にて。
奥田梨子は礼儀正しく言った。「遠野社長、こちらは森田財団が提案する買収価格、支払い方法、従業員の待遇などに関する資料です。まずご覧になって、問題があれば話し合いましょう」
寿村秘書は書類を遠野幹也が連れてきたチームに渡した。
遠野幹也は今回、会社の関連チームだけでなく、会社の法律顧問も同行させていた。
双方は不合理な条件について交渉を行った。
森田財団側が提示した買収条件は良好で、進展は順調だった。
彼らは交渉結果を確定した後、午後に正式な買収契約書を印刷する必要があった。
昼時になった。
奥田梨子は遠野幹也たちを森田財団の社員食堂に案内した。
遠野社長は奥田梨子の薬指の指輪に気づき、心の中でひそかに残念に思った。森田様がこんなに若くして亡くなったとは思わなかった。
狭山宇介は誰かが会社に入れたのか分からなかった。
彼は食堂に来ると、奥田梨子のところへ駆け寄ったが、寿村秘書がしっかりと彼を阻止した。
「奥田梨子、お前が害を…」
寿村秘書がどうやったのか分からないが、一本のチキンレッグが見事に狭山宇介の口に押し込まれた。
奥田梨子はちょうどチキンレッグを食べていたが、瞬時に動きを止めた。
美味しく食べられなくなった。
彼女はチキンレッグを置き、それでも寿村秘書に賞賛のまなざしを送った。
奥田梨子は微笑みながら遠野幹也に向き直って言った。「遠野社長、申し訳ありませんが、少し私用を処理しなければなりません。どうぞごゆっくり」
遠野幹也は頷いた。「わかりました」
寿村秘書は狭山宇介の腕をねじりながら立ち去った。
狭山宇介が口を開いて罵ろうとするたびに、寿村秘書は容赦なく腕をさらにねじった。
狭山宇介は痛みでわんわん叫んだ。
奥田梨子は赤い唇を拭い、立ち上がり、椅子を引いてハイヒールで歩き去った。
*
取締役会長室にて。
奥田梨子は椅子に座り、まぶたを上げ、だらしなくコーヒーを数口飲んだ。「さあ、罵りなさい」
寿村秘書は狭山宇介の肩をつついて、罵ってもいいという合図を送った。
狭山宇介は突然頭が冴え、腕をさすりながら、今日ここに来たのは自ら罠に飛び込んだようなものだと感じた。
ここは奥田梨子の縄張りだ。