第209章 彼女の腰

畑野志雄は奥田梨子が彼を知らないふりをしているのを見た。

彼の心は思わず引き締まった。

彼は無意識のうちに奥田梨子の隣にいる男性に目をやった。

彼は意外にもその人物を知っていた。

アジアクラウトグループのCEO、アイアコだ。

「畑野さん」

アイアコも畑野志雄を見て、明らかに驚いていたが、すぐに彼に挨拶をした。

「アイアコ」

二人は握手を交わした。

畑野志雄とアイアコはかつて協力関係にあったため、二人は旧知の仲だった。

奥田梨子は彼らが知り合いだとは知らなかった。

畑野志雄は友好的なふりをして奥田梨子に手を差し出し、軽く微笑んで「奥田社長」と言った。

とても礼儀正しい握手の動作のはずなのに。

男性の親指が密かに彼女の手の甲をなでていた。

手の甲が熱くなる。

奥田梨子は口元を少し引きつらせながら、心の中で畑野さんのこの厚かましい男を罵った。