手塚星司は病室に入って奥田梨子を見舞い、それから賀来蘭子と一緒に病院を出た。
賀来蘭子が車に乗り込むと、手塚星司に抱き上げられ、彼の膝の上に座らされた。
男の熱が彼女に伝わってきた。
「この数日ずっと連絡したのに、返事がなかったね」手塚星司の声は低く、少し不満げだった。
賀来蘭子は目を伏せ、小さな声で尋ねた。「桂子さんのことで忙しかったんじゃないの?お母さんはどう?」
手塚星司は目を細め、賀来蘭子が彼の質問から逃げていることに気づいた。彼は彼女をきつく抱きしめ、耳元で囁いた。「危ないところだったけど、まだ入院観察が必要だが、もう大丈夫だよ」
そう言うと、彼は彼女の首筋に軽くキスをした。熱が肌を通して震えるような感覚をもたらした。
賀来蘭子は身体を動かし、顔をそむけて逃れようとした。「今、生理中だから、変なことしないで」
手塚星司は不思議そうに言った。「君の生理って普通、月初めじゃなかったっけ?」
賀来蘭子は「……変わることもあるの。男の人には分からないでしょ」
彼女は自分で降りて座ろうとしたが、手塚星司に腰をしっかりと抱かれた。
「暴れないで、そういうことはしないから」
手塚星司は顎を賀来蘭子の肩に乗せた。「ただ抱きしめたいだけだよ。今回帰ってきたのは、君と婚姻届を出すためなんだ」
賀来蘭子は口角を引きつらせた。「嫌よ」
男の長い指が彼女の顔を優しく掴んで向かせた。「どうして嫌なの?」
賀来蘭子は黙ったまま何も言わなかった。
彼女のこの沈黙の態度に、手塚星司はどうしようもなかった。
「とりあえず結婚しなくてもいい。でも、オーリーに一緒に来てほしい」手塚星司は一歩引いた。
「見知らぬ土地になんて行きたくないわ」賀来蘭子は首を振り、態度は断固としていた。
手塚星司は本当に少し怒り始めた。この女性はどうしてこんなに頑固なのか。
彼は彼女の体全体を抱き上げて向きを変え、彼女が彼に向き合うようにした。
「賀来蘭子さん、忘れてないかな?僕はまだ君の債権者だよ。オーリーに来ないなら、逃げられたらどうするの?」
賀来蘭子は「あら、畑野さんからお金を借りてあなたに返すわ」
手塚星司は怒りながらも笑い、彼女の唇を乱暴に奪った。
彼はかすれた声で強引に彼女の目を見つめた。「半月の猶予をあげる。その時には君をオーリーに連れていくからね」