翌日、奥田梨子は会社に行き、寿村凱が奥田梨子の側を歩きながら、低い声で言った。「アールグッズ代理店の件について、警察はすでに調査を終えましたが、アールグッズの責任者は森田家の誰についても言及しておらず、向井平次についても触れていません。」
寿村凱が言及したこの責任者とは、向井平次の大学時代の同級生のことだった。
奥田梨子はこの結果を聞いても、何の驚きも見せなかった。
彼女はエレベーターを出た。これは予想通りのことだった。
エレベーターを出た後、奥田梨子たちはオフィスに入った。
彼女は寿村凱から渡された資料を受け取り、注意深く読んだ。「前任の購買担当役員を国に連れ戻すよう人を派遣して。黄田福兼の方はどうなっている?」
岡部俊雄が傍らに立ち、素早く報告した。「黄田福兼はすでに『素直に』向井平次のことを白状しました。彼は向井平次との通話を録音していたんです。賢いですね。」
奥田梨子はうなずき、目に満足の色が浮かんだ。
彼女は書類を机に置き、淡く笑った。「法律チーム全体に行動を起こさせて、関係者への訴訟準備を始めなさい。広報も動き出せるわ。各メディア、各プラットフォームで報道を始めさせて。」
岡部俊雄と寿村凱は「はい」と答え、それぞれ仕事に取り掛かるために出て行った。
*
昨夜、田中株主は安らかな眠りについた。
バッグバッググループの株価は今日も悲鳴の嵐だった。
彼は昨日株を手放したことを非常に喜んでいた。
「妻よ、いつか森田おじさんの奥さんを食事に招待しよう」田中株主は携帯を置きながら言った。
土田夫人はもちろん理解していた。彼らは向井晴子の助言に感謝する必要があった。そうでなければ損失は大きかっただろう。
彼女はうなずいた。「手配しておきます」
ちょうどそのとき、田中株主はバッグバッググループの株をわずかに保有している株主から電話を受けた。
この株主も会社についての良くない噂を耳にしており、心の中でうっすらと不安を感じていた。
「昨日株を売ったって聞いたけど?バッグバッググループの状況は本当に……そんなにひどいのか?」彼は少し焦って尋ねた。
田中株主は遠回しに言った。「新しい事業に投資する準備があって、手元に資金が足りなかったんだ」
この言葉が言い訳であることは一聞して分かった。
二人は数言葉を交わして電話を切った。