第306章 静かに笑った

翌日、奥田梨子は会社に行き、寿村凱が奥田梨子の側を歩きながら、低い声で言った。「アールグッズ代理店の件について、警察はすでに調査を終えましたが、アールグッズの責任者は森田家の誰についても言及しておらず、向井平次についても触れていません。」

寿村凱が言及したこの責任者とは、向井平次の大学時代の同級生のことだった。

奥田梨子はこの結果を聞いても、何の驚きも見せなかった。

彼女はエレベーターを出た。これは予想通りのことだった。

エレベーターを出た後、奥田梨子たちはオフィスに入った。

彼女は寿村凱から渡された資料を受け取り、注意深く読んだ。「前任の購買担当役員を国に連れ戻すよう人を派遣して。黄田福兼の方はどうなっている?」

岡部俊雄が傍らに立ち、素早く報告した。「黄田福兼はすでに『素直に』向井平次のことを白状しました。彼は向井平次との通話を録音していたんです。賢いですね。」

奥田梨子はうなずき、目に満足の色が浮かんだ。

彼女は書類を机に置き、淡く笑った。「法律チーム全体に行動を起こさせて、関係者への訴訟準備を始めなさい。広報も動き出せるわ。各メディア、各プラットフォームで報道を始めさせて。」

岡部俊雄と寿村凱は「はい」と答え、それぞれ仕事に取り掛かるために出て行った。

*

昨夜、田中株主は安らかな眠りについた。

バッグバッググループの株価は今日も悲鳴の嵐だった。

彼は昨日株を手放したことを非常に喜んでいた。

「妻よ、いつか森田おじさんの奥さんを食事に招待しよう」田中株主は携帯を置きながら言った。

土田夫人はもちろん理解していた。彼らは向井晴子の助言に感謝する必要があった。そうでなければ損失は大きかっただろう。

彼女はうなずいた。「手配しておきます」

ちょうどそのとき、田中株主はバッグバッググループの株をわずかに保有している株主から電話を受けた。

この株主も会社についての良くない噂を耳にしており、心の中でうっすらと不安を感じていた。

「昨日株を売ったって聞いたけど?バッグバッググループの状況は本当に……そんなにひどいのか?」彼は少し焦って尋ねた。

田中株主は遠回しに言った。「新しい事業に投資する準備があって、手元に資金が足りなかったんだ」

この言葉が言い訳であることは一聞して分かった。

二人は数言葉を交わして電話を切った。