毎日家でゴロゴロできるのはどれほど気楽なことか。退屈したら外に出て、ショッピングでもする。
朝比奈初は番組収録前の半月間は録画がなく、快適そのものだった。食べ物や飲み物に困ることもなく、誰にも管理されず、とても自由だった。
番組に参加してからというもの、初は常に何かを発信しているような気分だった。疲れるというほどではないが、普通の人なら録画前の生活の方が好ましいと思うだろう。
長谷川一樹は彼女の答えを聞いて、目に複雑な色を浮かべた。
よく考えてみれば、一樹は彼女の言っていることも全く理屈が通っていないわけではないと思った。
監督はそれを聞いて、突然どう返事をしていいか分からなくなった。
初は彼らの表情を完全に無視し、冷静に言った。「誰だって家で快適にゴロゴロしたいでしょう。でも私の夫はまだ帰ってきていないので、この番組は彼の代わりに続けて録画します」
長谷川彰啓は彼女に居場所を与え、彼女も家族の面倒を見る手伝いができる。
彼が何も言わないのを見て、初はさらに言った。「ナレーションの広告のことは他の人を探してください。私は本当にお手伝いできません」
そう言うと、初はテーブルの片付けを続け、集めた食器を台所へ持っていって洗い始めた。
一樹は布巾を持って長い間そばに立っていた。初がようやくテーブルを片付け終えるのを見て、彼は前に進み出て残りのゴミを片付け始めた。
監督は色々と考えた末、一樹が立ち去ろうとした時、ようやく決断を下した。「長谷川一樹、その2つのナレーション広告は君に任せるよ」
「何ですって?」一樹は急に顔を上げ、目を見開いて監督を見つめた。
このような広告の挿入は通常、知名度の高いタレントに依頼されるものだ。だから監督が初に声をかけた時、一樹はそれほど驚かなかった。しかし、この任務が彼に回ってきたとき、彼の瞳孔は驚きで震えた。
番組スタッフが彼にナレーション広告を?
「九十九聴と一緒に録画してもいいよ。台詞はこちらにあるから、覚えられなくても大丈夫。カメラの外にプロンプターを置くから、感情を込めて読んでくれればいい」
聴も広告の仕事を引き受けていた。監督は彼らがプロだと信じていたので、このことについてはあまり多くを説明しなかった。
実際には香水と飴の広告だけだった。初がやりたくないなら、監督はこれ以上強制しなかった。